就業不能保険でうつ病などの精神疾患は保障できる?保障対象である商品についても紹介!

保険全般

「就業不能保険」は、病気やケガで長期間働くことができなくなった場合のリスクに対して備えることができる保険です。しかし商品によっては、全ての疾患に対して保障されているわけではありません。

特に近年増加傾向にある統合失調症やうつ病などの精神疾患は、就業不能保険では保障対象外としているケースが一般的です。

この記事では、就業不能保険における精神疾患の位置づけや精神疾患をカバーできる就業不能保険の特徴などを解説します。精神疾患による収入減に不安を抱える人や保険で収入減をカバーしたいと考えている人はぜひ参考にしてください。

就業不能保険はうつ病などの精神疾患を保障できる?

就業不能保険は病気やケガで一定期間働けなくなったときのリスクに備える保険です。しかし、うつ病や適応障害、統合失調症などの精神疾患は保障対象外としている商品が多くなっています。

保障対象外となる理由

精神疾患が就業不能保険の保障対象外とされている理由としては、「症状の線引きが難しいこと」が挙げられます。精神疾患は、罹患(りかん)しているかどうかを見た目で判断するのは難しく、回復しているかどうかも分かりにくいのが特徴です。

そもそも保険は契約者間で保険料や給付額が不平等にならないよう、公平性を担保した上で保障内容を定めます。罹患しているかどうかの明確な線引きがない精神疾患は、契約者間での公平性が担保できない可能性があるため、保障対象外としている商品が多くなっています。

うつ病で就業不能状態となる可能性

就業不能保険がうつ病などの精神疾患を保障対象外としているケースが多い一方で、うつ病は過労死の主な原因として挙げられることが多い疾患です。

実際にうつ病などの精神疾患により、就業不能状態となる可能性はどの程度あるのでしょうか。厚生労働省のデータを参考にしながら詳しく見ていきましょう。

うつ病患者の実態から見る可能性

厚生労働省が発表している「令和2年患者調査の概況」によると、うつ病を含む気分障害の患者数は、入院で約2万8,000人、外来では約9万1,000人 という結果になっています。

また「令和3年 労働安全衛生調査(実態調査)」 によると、メンタルヘルス不調により連続1ヶ月以上の休業または退職をした労働者がいた事業所の割合は10.1% です。

この結果から、うつ病は誰しも罹患する可能性のある身近な病気といえます。

うつ病に罹患した場合の入院は長引く可能性がある

「令和2年患者調査の概況」によると、うつ病を含む気分障害に罹患した場合は、他の病気と比べて入院が長引きやすいことが分かっています。以下は、各病気における年齢別の入院日数とその平均です。

気分障害 がん 脳血管疾患
0~14歳 42.5 14.0 31.3
15~34歳 40.1 10.6 61.7
35~64歳 116.7 13.3 51.8
65歳以上 193.5 20.6 83.6
平均入院日数 137.4 18.2 77.4

※単位:「日」

各疾患の平均入院日数を見ると、うつ病を含む気分障害の入院日数はがんよりも約120日、脳梗塞やくも膜下出血といった重度の疾患が含まれる脳血管疾患よりも約60日長いことが分かります。

また気分障害は35~64歳の入院期間が長くなっていることから、現役世代ほどうつ病による長期的な収入源のリスクがあるといえるでしょう。

うつ病などの精神疾患をカバーできる就業不能保険もある

就業不能保険は精神疾患を保障対象外とするケースが一般的ではあるものの、いくつかの保険会社では精神疾患もカバーできる就業不能保険を取り扱っています。

ただし、精神疾患の場合、保険会社によって保険金が支払われる条件はさまざまです。加えてがんや脳卒中などの疾患と比べると、症状の見分けがつかないことを理由に給付条件が厳しいほか、給付にも制限が設けられる場合が多くなっています。具体的には、以下のような条件や制限が設けられている場合があります。

  • 給付の回数に制限がある
  • 一時金のみの支払いになる
  • 在宅療養は保障対象外になる
  • 障害認定が必要になる

精神疾患による就業不能時のリスクに備えることを目的に保険加入を検討する場合は、保障内容を十分に理解した上で加入する必要があるでしょう。

精神疾患をカバーできる就業不能保険5選

精神疾患をカバーできる就業不能保険は、給付金や保障内容などが商品によって異なります。ここでは、おすすめの就業不能保険を5つ紹介します。加入を検討する際の参考にしてください。

保険料 給付金月額 支払い上限・支払い対象外期間 主な保障内容
アフラックの休職保険 35歳男性:2,150円
35歳女性:1,770円
※給付金月額10万円、保険期間1年
年収に応じて設定。上限40万円 通算12回限度 精神疾患で休職した場合(在宅療養含む)に、毎月精神疾患回復支援給付金が支払われる
働けなくなったときの保険 35歳男性:2,410円
35歳女性:2,090円
※給付金月額10万円、保険期間60歳
・15 歳~59 歳:最低年金月額 3 万円より 1 万円単位

・60 歳~75 歳:最低年金月額 1 万円より 1 万円単位

1回の早期就業不能状態で5回、通算36回限度 精神疾患で入院した場合に、早期就業不能保険金が30日ごとに支払われる
アクサダイレクトの働けないときの安心 35歳男性:2,390円
35歳女性:2,100円
※給付金月額10万円、保険期間60歳
年収や職業に応じて5~50万円の範囲で設定する
  • 所定の支払い条件を満たした後、60日間は保障対象外
  • 支払い回数は通算18回限度
精神疾患で入院または障害等級1級または2級と認定された場合に、就業不能給付金が毎月支払われる
働く人への保険3 35歳男性:2,651円
35歳女性:2,250円
※給付金月額10万円、保険期間60歳
10~50万円まで5万円単位で設定(年収による上限あり) 支払い対象外期間は60日または180日(選択可能)
  • 精神疾患で入院した場合に、入院見舞金が支払われる
  • 所定の就労不能状態が継続した際に、精神疾患就業不能一時金が支払われる
働く人のたより 35歳男性:2,030円
35歳女性:1,860円
※給付金月額10万円、保険期間60歳
5~50万円まで5万円単位で設定(年収や職業による上限あり)
  • 支払い対象外期間は60日
  • 支払い限度は、月に1回、保険期間を通じて通算18回
精神疾患で入院または入院後の在宅療養を受けた場合、就業不能保険金が毎月支払われる

アフラック|アフラックの休職保険

「アフラックの休職保険」は、病気やケガで就労困難な状態が31日以上継続したときに、給付金が支払われる保険です。保険期間は1年で、最長70歳まで継続できます。勤務先による休職証明と医師による治療が継続していることを条件に、毎月「回復支援給付金」が支払われるのが特徴です。

また、アフラックの休職保険には1型と2型の2種類があり、1型を選ぶと精神疾患による在宅療養時も保障対象となります。

ただし、給付金を受け取れるのは、通算で12回が限度です。加えて受け取れる給付金月額の上限は、額面年収の3%・20万円・回復支援給付金月額(額面年収の3%または40万円のいずれか小さい額)のうち、いずれか小さい額になる点にも注意しましょう。

商品を見る

太陽生命|働けなくなったときの保険

「働けなくなったときの保険」は、病気やケガを原因として入院、または太陽生命所定の就業不能状態となった場合に「早期就業不能保険金」が支払われる保険です。

太陽生命所定の就業不能状態が180日以上継続した場合や、公的介護保険制度の要介護2以上に認定された場合には「就業不能年金」が支払われます。最低支払い期間が設定されているため、保険期間満了直前に支払い事由に該当した場合でも一定の給付金を受け取れるのが特徴です。

ただし精神疾患の場合は、入院したり日常生活で介護が必要な状態になったりしない限り、給付金が受け取れません 。そのため、精神疾患に罹患したケースにおいては、給付金を受け取るハードルがやや高いといえるでしょう。

商品を見る

アクサダイレクト生命|アクサダイレクトの働けないときの安心

「アクサダイレクトの働けないときの安心」は、働けない状態から回復するまで、または保険期間が満了するまでの期間中に「就業不能給付金」が回数無制限で支払われる保険です。

職業や収入の形態に合わせて、受給開始日から満額の給付金を受け取れる「満額タイプ」と、設定した給付金月額の半額を受給開始日から一定期間受け取る「半額タイプ」の2種類から選べるようになっています。

精神疾患の場合は、精神疾患を直接の原因とする入院、あるいは国民年金法における障害等級1級または2級の認定を受けることが基本的な支払い条件です。

ただし、精神疾患が原因で在宅療養していた場合、給付金が支払われない点に注意しましょう。また、通算の支払い回数にも上限があり、18回が限度となっています。

商品を見る

ライフネット生命|働く人への保険3

「働く人への保険3」は、病気やケガを原因として入院や在宅療養を受けるなど、所定の就業不能状態が継続した際に、就業不能保険金が毎月受け取れる保険です。就業不能状態から回復した後には、「復帰支援一時金」として就業不能給付金月額の3倍の金額を受け取れます。

しかし、精神疾患に罹患した場合、毎月受け取れる就業不能保険金は支払われません。その代わり、14日以上継続して入院した場合には、入院1回につき10万円の入院見舞金が受け取れます。

また、入院している状態や、障害等級1級または2級に認定されている状態が継続した場合には、「精神疾患就業不能一時金」として就業不能給付金月額の3倍の金額を受け取ることが可能 です。

商品を見る

SBI生命|働く人のたより

「働く人のたより」は、病気やケガの治療による入院や在宅療養が続いた場合に、毎月給付金が受け取れる保険です。給付金の受け取り方や、カバーする病気の範囲を選択できる点が魅力となっています。

「全疾病型」を選択すれば、精神疾患による就業不能状態にも対応可能です。ただし、精神疾患で給付金を受け取るためには、入院または入院後の在宅療養が必要となります。支払い回数にも通算18回という上限があるため注意しましょう。

商品を見る

うつ病のリスクを就業不能保険でカバーする場合の3つのポイント

ここでは、うつ病のような精神疾患のリスクを就業不能保険で備える場合に、押さえておきたいポイントを解説します。

ポイント①:公的保障と併用する

働けなくなった原因が精神疾患である場合は就業不能保険の支払い条件が厳しくなることから、十分な給付金が受け取れず、生活費や治療費を十分に補填できない可能性があります。

そのため、精神疾患に罹患した場合は、傷病手当金や自立支援医療制度などの公的保障と就業不能保険を併せて活用することが大切です。

ただし、会社員や公務員以外の個人事業主やフリーランス、専業主婦(夫)は、傷病手当金が支給されないなど、公的支援制度が手薄である場合が多いでしょう。

その場合は、自身が利用できる公的制度を確認した上で、貯蓄や資産で備えるか、あるいは民間の医療保険や就業不能保険に手厚く加入することを選択肢として考える必要があります。

ポイント②:給付期間が長い商品を選ぶ

就業不能保険でうつ病のような精神疾患のリスクに備える場合には、できる限り給付期間が長い商品を選ぶことをおすすめします。

精神疾患に罹患すると入院が長期化しやすく、再発のリスクもあるため働けない期間が長くなる可能性があります。給付回数の上限が少ない商品や一時金しか支払われない商品の場合、生活費や治療費が十分にまかなえず、家計への負担が大きくなってしまうかもしれません。

給付期間が長い商品であれば、うつ病などの精神疾患によって入院した場合でも、家計への圧迫を回避できる可能性が高まります。

ポイント③:保険料と保障内容のバランスを考慮する

就業不能保険へ加入する場合は、保険料と保障内容のバランスを考慮した上で検討しましょう。基本的に保険料は、給付額を大きくしたり、給付期間が長い商品を選んだりするほど高くなります。

保障内容が充実していれば働けなくなったときでも安心ですが、保険料が日々の生活を圧迫してしまう可能性もあります。また、せっかく保険に加入しても支払い要件に該当しなければ、1円も支払われない可能性もあるかもしれません。

これは就業不能保険だけでなく、医療保険なども同様です。保険に加入する場合は、自身の貯蓄や収入はもちろん、年齢や職業などの要素から自身が病気やケガになる確率などを考慮する必要があります。これらを考慮した上で保険料と保障内容をバランスよく設定することが大切です。

うつ病に罹患した場合に活用できる公的保障

うつ病にかかってしまった際は、民間保険だけではなく公的保障を活用することで、収入を補填したり治療費の自己負担を軽減したりできる場合があります。

ここでは、うつ病に罹患したときに活用できる公的保障を紹介します。

傷病手当金

傷病手当金とは、病気やケガで勤務先を連続して欠勤した際に、所定の給付金が支給される制度のことです。はじめの3日間は待機期間となるため、4日目以降の欠勤分に対して平均月収の3分の2程度の金額が支払われます。給付期間は、最長1年6ヶ月 です。

傷病手当金は「全国健康保険協会管掌健康保険」や「組合管掌健康保険」の加入者が支給対象となっているため、主に会社員・公務員向けの制度となっています。自営業者やフリーランスが加入する国民健康保険には、原則として傷病手当金の制度がないため注意しましょう。

自立支援医療

自立支援医療とは、精神疾患にかかる医療費の自己負担を軽減する制度のことです。この制度を利用することで、投薬やデイケアなどの費用が1割負担となります。所得に応じてひと月あたりに負担する金額の上限が決まっている ため、上限を超えて請求されることはありません。

ただし入院時にかかる治療費や精神疾患と無関係の医療費については、自立支援医療制度の対象外となるため注意しましょう。

労災保険

労災保険とは、業務中や通勤中の病気やケガが原因で治療が必要となった場合に給付金が支払われる制度のことです。障害状態となった場合や、死亡した場合でも給付金が支払われることがあります 。

また、実際に治療にかかった費用だけでなく、休業補償も支払われます。支払われる金額はおおよそ給与の80%です。ただし給付を受けるためには、労働基準監督署による「労災認定」を受ける必要があります。

精神障害者保健福祉手帳

精神障害者保健福祉手帳は、精神障害により長期にわたって日常生活や社会生活への支障が生じている人に向けて発行される手帳のことです。手帳を持っている人は、公共料金の割引や税金の控除、減免などのサービスを受けられます。

まとめ

就業不能保険においては、うつ病をはじめとする精神疾患を保障対象外としている場合が多いです。中には保障対象としている商品もありますが、「支払い回数に限度がある」「支払いは一時金のみ」といったように精神疾患以外の疾患よりも支払い条件がやや厳しい場合があります。

精神疾患のリスクをカバーする目的で就業不能保険への加入を検討する際は、どのような条件で給付金が支払われるのかを必ず確認しましょう。

しかし、就業不能保険だけで、病気やケガにおけるリスクを全てカバーするのは得策ではありません。まずは「貯蓄や資産で備えられるか」「公的制度は活用できるか」を考慮した上で、カバーしきれない分を就業不能保険などで補填するようにしましょう。





関連記事

特集記事

オカネノホンネ編集部

オカネノホンネ編集部

難しいお金の話を、ファイナンシャルプランナー・ファイナンシャルプランニング技能士や保険や金融商品の専門家が忖度なし「ホンネ」でわかりやすく伝えます。

TOP