収入保障保険や所得補償保険など保険の中には似ている商品があり、どのような違いがあるのかを具体的に理解している人は少ないでしょう。特に収入保障保険と所得補償保険は、「収入を保障する保険」「所得を補償する保険」と名称の意味合いからも似ています。
ただ、この二つの保険は、取扱会社や保険金の支払い事由、保険金が下りるまでの期間など、細かな部分で違いがあります。
この記事では、収入保障保険と所得補償保険の違いについて解説します。収入保障保険と所得補償保険の使い分けについても解説するため、二つの特徴を理解して、自分に合った保険の使い方を見つける参考にしてください。
目次
収入保障保険と所得補償保険の違い
収入保障保険と所得補償保険は、いずれも万が一の場合の備えとして役立つ保険です。しかし、双方には保障内容や支払い事由などに違いがあります。二つの違いを表にまとめたので、確認してみてください。
収入保障保険 | 所得補償保険 | |
取扱会社 | 生命保険会社 | 損害保険会社 |
保険の目的 | 万が一のことが起きた場合に残される家族の生活に対して備える | ケガや病気で働けなくなった場合の収入減少に備える |
保険期間 | 一般的に60歳・70歳までなどの長期 | 一般的に数年単位の短期 |
保険金受取人 | 被保険者の家族 | 被保険者本人 |
保険金の支払い事由 | 死亡・高度障害 | 病気・ケガ |
保険金の支払われ方 | 分割・一時金 | 毎月一定額が支払われる |
保険金が下りるまでの期間 | 書類の到着から数営業日 | 免責期間後 |
収入保障保険との詳しい概要については、以下を参照してください。
違い1:「取扱会社」
収入保障保険と所得補償保険の違いとして、まず取扱会社が異なることが挙げられます。収入保障保険は生命保険会社が取り扱っており、所得補償保険は損害保険会社が取り扱っています。
収入保障保険は、被保険者の死亡または高度障害によって保険金が支払われるいわゆる死亡保険の一種です。生命にかかわる保険であるため、生命保険会社で取り扱いわれています。一方、所得補償保険は病気やケガによる収入減少という損害を補償する保険であるため、損害保険会社が取り扱います。損害保険会社は病気やけがのほか、自動車事故や火災への補償など、さまざまなリスクに対して補償を行う会社です。
違い2:「保険期間」
収入保障保険と所得補償保険には、保険期間も違いとして挙げられます。収入保障保険は残された家族の生活を守るため、基本的に保険期間は長期間であることが多いです。例えば期間を定年退職までの65歳と設定したり、子供が成人するまでの期間を保険期間として設定したりするケースが考えられます。
一方で、所得補償保険の保険期間は、基本的に1〜2年ほどの短期間となっています。ただ、保険会社によっては期間を5年と設定していたり、長期間での契約にも対応していたりする場合もあります。
違い3:「保険金の支払い事由」
収入保障保険における保険金の支払い事由は、保険加入者が死亡した場合、または高度障害となった場合です。
一方で、所得補償保険の場合は、被保険者が病気やけがで一時的に働けなくなった場合が支払い対象です。加入者が負った病気やけがが本当に働けない程度のものなのかは、医師の診断により判断されます。ただし、精神的な病気が原因の場合は、補償対象外となることもあるため注意しましょう。
違い4:「保険金の支払われ方」
収入保障保険は毎月一定額を年金のように受け取るのが一般的ですが、保険商品によっては一時金で受け取れる場合もあります。年金のように受け取れる点は収入減少に備えることが目的である所得補償保険も同様ですが、所得補償保険は一時金で受け取ることができない場合が多いです。
違い5:「保険金が下りるまでの期間」
収入保障保険の場合、保険金が下りるまでの期間は会社にもよりますが、必要な書類を届けてから数営業日以内と定めている会社が多いです。
一方、所得補償保険の場合は、基本的に免責期間が設定されています。免責期間とは保険金の支払われない期間のことであり、一般的には7日程度に設定されています。長期補償タイプの契約であれば、60~365日と長期になっている場合もあります。所得補償保険では保険金は免責期間が過ぎてから保険金が支払われるため、保険商品によっては支払われるまでに時間を要する可能性があるでしょう。
収入保障保険と所得補償保険の使い分け
ここまで収入保障保険と所得補償保険の違いについて解説してきましたが、結局どちらに入るのがよいのか迷う人もいるでしょう。この二つの保険の使い分けは人によってさまざまですが、被保険者がサラリーマンか個人事業主かで使い分けるのも選択肢の一つとして有効です。
サラリーマンの場合は、働けなくなったときに社会保険による傷害手当金が支払われます。傷害手当金は最長1年6か月間支払われるため、傷病手当金の受取額や貯蓄などで生活できる場合、所得補償保険に入る必要性は低いといえるでしょう。
一方で、サラリーマンとして家族を養っているときに死亡や高度障害状態になってしまうと、残された家族に負担を強いる可能性があります。そのため、サラリーマンにおける収入保障保険の必要性は高いといえるでしょう。
ただし、これは個人事業主も同様であるため、保険への加入を検討している個人事業主の人は公的保障が少ない分、収入保障保険や所得補償保険はもちろん、さまざま保険を含めて検討する必要があるといえます。
しかし、万が一に備えられるほど貯蓄が十分にある人や資産運用が好調な人などは、必ずしも保険に加入する必要はありません。必ず自身のライフプランや貯蓄、支出などを考慮した上で、保険の必要性を検討する必要があることを覚えておきましょう。
まとめ
収入保障保険と所得補償保険は、いずれも万が一の事態が起こった場合の経済的負担に備えられる保険です。二つの違いは、取扱会社や保険金の支払い事由、保険金をもらえる期間などに違いがあります。自分に必要のない保険にまで加入してしまうと家計が圧迫するおそれがあるため、保険への加入は自身の働き方やライフプランなどを踏まえて慎重に検討しましょう。
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP