親が高齢になると、万が一のことが起きた際の費用について心配になる人も多いのではないでしょうか。親が生命保険に加入していれば保険金で補えますが、そうでない場合は大きな負担となります。
こういった事態を防ぐために、子供が親に生命保険をかけられるのか、気になる人も多いでしょう。
そこで本記事では、親に生命保険をかける際のメリットや注意点、商品を選ぶ際のポイントなどを詳しく解説します。
目次
子供が親に生命保険をかけることは可能
子供が親のために生命保険に加入することは可能です。なお、被保険者(保障の対象になる人)を両親、契約者(保険料を支払う人)を子供とする契約も基本的に認められています。
ただし、保険会社や商品によっては、契約者と被保険者を同一としなければならないケースもあります。特に、インターネットや郵送など、対面以外の手続き方法を希望する場合は、契約者と被保険者が異なる契約はできないでしょう。
親に生命保険をかけるメリット
子供が親のために生命保険に加入することで、さまざまなメリットを得られます。以下では、どのようなメリットを得られるのか詳しくみていきましょう。
親の万が一に備えられる
親が高齢になると、家族は以下のような経済的リスクに直面する可能性があります。
- 病気やケガをして高額の医療費がかかる
- 自宅や施設で介護を受けるための費用がかかる
- 死亡して葬儀代や墓石購入費などがかかる
医療費のみであれば、高額療養費制度を利用すれば自己負担額を一定範囲内に抑えることが可能です。しかし、大部屋から個室に変更した際にかかる差額ベッド代や、先進医療(※)・自由診療などは公的医療保険の対象外となるため、全額自己負担となります。
※診察や検査、投薬など、通常の治療と共通する部分については公的医療保険の対象
さらに高齢になると、入院が長期化する傾向があります。厚生労働省の「令和2年患者調査の概況」によると、全年代の平均入院日数は32.3日であるのに対して、65歳以上の場合は40.3日です。そのため、入院が長期化し、治療費の負担が重くなる可能性があります。
また、高齢になれば体力の低下や認知症などによって介護が必要になるでしょう。なお、生命保険文化センターより行った調査によると、介護が必要になった場合、一時的な費用として平均74万円(住宅改造費や介護用ベッドの購入費を含む)と記載されています。なお、月々の費用としては平均8.3万円かかるようです。
高齢者ほど死亡リスクは高くなるので、生命保険で死亡時に備えておく必要は高いといえるでしょう。以下のように、80歳以降の死亡率は40代や50代の10倍以上です。
年齢 | 死亡率 |
40~44 | 0.09% |
45~49 | 0.14% |
50~54 | 0.23% |
55~59 | 0.36% |
60~64 | 0.56% |
65~69 | 0.90% |
70~74 | 1.52% |
75~79 | 2.39% |
80~84 | 4.22% |
85~89 | 8.09% |
引用:厚生労働省|「令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況 死亡率(人口10万対)の年次推移,性・年齢(5歳階級)別」
親の預貯金や年金だけでこれらの費用を補えない場合は、子供をはじめとする家族が費用を負担するケースがほとんどでしょう。生命保険に加入しておけば、このような万が一の事態が発生しても安心して対処できます。
相続税の納税資金を用意できる
相続税は、被相続人の死亡の日の翌日から10ヶ月以内に現金で一括納付しなければなりません。しかし、自宅や不動産など換金しにくい相続財産が多く、現金や預貯金がない場合は、遺族が相続税を支払えない可能性があります。
死亡保険に加入しておけば、毎月コツコツと保険料を支払い、納税資金を貯めることが可能です。急に亡くなった場合には、契約時に決められた金額を受け取れるため、安心して相続に備えられるでしょう。
生命保険料控除を受けられる
生命保険料控除とは、1年間に支払った保険料に応じて、所得から控除を受けられる制度です。課税対象となる所得が減ることで、所得税や住民税の負担を軽減できます。
生命保険料控除は、基本的に保険料を負担している人が活用できる制度なので、親のために加入している生命保険であっても、子供が控除を受けることが可能です。
生命保険料控除は、新制度と旧制度に分かれており、以下のようにそれぞれ控除額が異なります。
旧制度 (2011年12月31日以前の契約) |
新制度 (2012年1月1日以降の契約) |
|
一般生命保険料控除 | 所得税5万円 住民税3.5万円 |
所得税4万円 住民税2.8万円 |
介護医療保険料控除 | – | 所得税4万円 住民税2.8万円 |
個人年金保険料控除 | 所得税5万円 住民税3.5万円 |
所得税4万円 住民税2.8万円 |
3種類合計の上限額 | 所得税10万円 住民税7万円 |
所得税12万円 住民税7万円 |
所得税率が高い人ほど、節税の効果は大きくなるので、実質的な保険料負担を軽減できるでしょう。
親に生命保険をかける際の注意点
子供が親に生命保険をかける際は、以下で紹介する内容を把握したうえで決断するようにしましょう。
保険料の負担が大きくなりやすい
生命保険の保険料は、加入時の性別や年齢によって決まるケースが一般的です。そのため、親が高齢の場合は、毎月支払う保険料が高くなることもあります。
また、健康状態によっては、保険料が割増される「特別条件付き」での加入となるケースもあるでしょう。保険料の負担が重くなり、途中解約することになれば、いざというときに保障を受けられない可能性があります。そのため、親の生命保険に加入する際は、保険料が無理なく支払えるかを考慮したうえで検討しましょう。
契約内容によって税金の負担が増える可能性がある
保険金受取人を誰にするかによって、以下のように保険金にかかる税金の種類が変わります。
契約者 | 被保険者 | 受取人 | 税金の種類 |
子 | 父 | 母 | 贈与税 |
子 | 父 | 子 | 所得税 |
たとえば、契約者・受取人が子、被保険者が父の場合は、一時所得の対象です。一時所得の課税対象金額は「(受け取った保険金-支払った保険料-50万円)×1/2」で求められます。一方で、贈与税は「受け取った保険金-110万円」が課税対象です。このように、契約内容によって、負担する税額が大きく変わる可能性があることを理解しておきましょう。
なお、医療保険の場合は基本的に契約者が子供、被保険者・受取人が親になります。入院や手術をした際に支払われる給付金は、非課税です。
被保険者の承諾を得なければ契約できない
家族であるとはいえ、被保険者(親)の承諾を得ずに子供が生命保険を契約することはできません。これは、保険法第38条で、契約者以外を被保険者とする保険契約について、被保険者の同意がなければ無効とされているためです。
保険契約手続きの際には、被保険者自身の署名や告知が必要になるのが一般的です。親が加入に反対している場合は、契約が難しいと覚えておきましょう。
親にかける生命保険を選ぶ際のポイント
子供が親のために生命保険に加入する際は、親や自身の収入・貯蓄を考慮したうえで、どういったリスクにいくら備えられるのか、必要があるのかを明確にする必要があります。
たとえば、数百万円程度の貯蓄があれば、亡くなったときの葬儀代くらいは補えるかもしれません。しかし、病気や介護が長引いた場合に備えるのであれば、医療保険やがん保険、介護保険など別の保険に加入しておいたほうが安心できるでしょう。
また、相続税の納税資金として保険を利用したい場合は、税理士に相談し、あらかじめ納税額のシミュレーションをしておくと、過不足なく保険に加入できるはずです。
「とりあえず入っておけば安心だから」と安易に保険に加入するのではなく、計画的に準備を進めましょう。
まとめ
子供が親に生命保険をかけるのは、親に万が一のことがあった際の経済的なリスクや、相続税の納税資金などに備えるという点で有効です。生命保険料控除も受けられるので、節税効果を得られます。
ただし、契約内容によっては、支払う保険料や税金の負担が大きくなるため、不要な保険に入らないように、契約前に必ずシミュレーションをしておきましょう。そもそも被保険者の同意がなければ契約することは難しいため、親に十分な説明をして理解を得るのも大切です。

東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP