「利差配当付終身保険」という保険商品があると聞き興味を持ったものの、その内容がイメージしにくいと感じている人は多いかもしれません。利差配当付終身保険とは、将来の安心を確保しつつ、配当金にも期待できる魅力的な保険です。同商品は、万が一の保障と資産形成を両立させたい人に適しています。
本記事では、5年ごと利差配当付終身保険のメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
目次
5年ごと利差配当付終身保険とは?
5年ごと利差配当付終身保険は、保険会社が資産運用で得た剰余金(株主資本から資本金を差し引いて余ったお金)を5年ごとに契約者へ配当金として分配する終身保険です。配当金を受け取れる可能性があることが特徴ですが、支払われる配当金の額や有無は保険会社の運用実績によって異なります。
有配当保険と無配当保険の違い
生命保険会社では、以下3つの利率(予定基礎率)を利用して保険料を算出しています。
- 予定利率:契約者に約束する資産運用の利回り
- 予定死亡率:年齢や性別ごとに予測される死亡率
- 予定事業費率:保険会社の事業運営に必要な経費の割合
有配当保険では、これらの予定基礎率を上回る運用が行われた場合、その剰余金が配当金として契約者に還元されます。例えば、経済が好景気で保険会社の運用利回りがよかった場合、予定利率と実際の運用利回りとの差額が剰余金として支払われます。
有配当保険には、予定利率、予定死亡率、予定事業費率の3つと実績の差から生じた剰余金を配当金として還元する「3利源配当タイプ」と、予定利率と実際の運用成果の差によって生じた余剰金を分配する「利差配当タイプ」があります。5年ごと利差配当付終身保険は、利差配当タイプの一種です。
一方で、無配当保険では保険料を算出する際に用いる予定基礎率を実際の経験値に近いものに設定しています。そのため、配当金はないものの、有配当保険に比べると保険料が安めに設定されている傾向があります。
生命保険の配当金の仕組みについては、以下の記事でも詳しく解説しています。気になる人はぜひご確認してみてください。
配当金はいつもらえる?
5年ごと利差配当付終身保険では、契約から5年目の事業年度末に剰余金が発生した場合、6年目以降の保険契約応当日(契約日と同じ日付にあたる日)に配当金を受け取れます。このサイクルが続き、保険期間中に5年ごとに配当金が支払われるのが一般的です。
例えば、2024年1月1日に契約した場合、2029年の1月1日が配当金の支払い日となり、以降5年ごとに受け取れます。
ただし、配当金の支払いは剰余金が発生した場合に限られるため、必ずしも支払いが約束されているわけではありません。
なお、3年ごとに配当金が支払われる「3年ごと利差配当タイプ」や、毎年配当金が支払われる「毎年利差配当タイプ」など、異なる配当タイプの保険商品も存在します。
5年ごと利差配当付終身保険のメリット
5年ごと利差配当付終身保険の大きなメリットは、保険会社の資産運用が好調だった場合に配当金を受け取れる点です。例えば、景気がよくなり国債の利回りが上昇したり、株価が好調だったりすると、予定利率を超える運用成果が得られ、配当金が発生する可能性があります。このため、将来的に経済状況が改善すると予測される場合には、よい選択肢となるかもしれません。
また、終身保険であるため、万が一のことがあった場合は死亡保険金、解約時には解約返戻金が支払われます。配当金を受け取るチャンスもあるため、掛け捨てにならない点もメリットといえるでしょう。
5年ごと利差配当付終身保険のデメリット
無配当保険と比較すると、5年ごと利差配当付終身保険の保険料は高めに設定されている傾向があります。配当金が発生する可能性を考慮した保険料になっていますが、実際に配当金が支払われるかどうかは保険会社の運用成果次第であり、支払いが保証されているわけではありません。例えば、運用が不調だった場合には、配当金がまったく支払われないこともあります。そのため、コストに見合うかどうかは慎重に検討したほうがよいでしょう。
また、配当金を受け取れる場合でも、予想より少額になる可能性があるため、配当金を貯蓄代わりに活用するのは難しいでしょう。
さらに配当金を受け取るには、少なくとも「5年以上」契約を継続する必要があります。保険料負担が重いと感じた場合でも、配当金の支払いタイミングを考えると見直しをためらってしまうことがあるかもしれません。そのため、契約時に保険料が家計に負担にならないかを確認しておくことが大切です。
5年ごと利差配当付終身保険と無配当保険はどっちがおすすめ?
5年ごと利差配当付終身保険と無配当保険のどちらがよいかは、その人の状況によって異なります。5年ごと利差配当付終身保険は、配当金がもらえる可能性があることは魅力ですが、その金額や支払いが確定しているわけではないため、一概にどちらが有利とはいえません。
例えば、好景気が続き金利が上昇すれば、5年ごと利差配当付終身保険は配当金が発生しやすくなり、有利になることもあります。しかし、経済状況は予測が難しく、配当金がまったく支払われないこともあるため「必ずお得になる」とはいえません。
そのため、保険を選ぶ際には配当金を基準にしすぎないほうがよいでしょう。どちらの保険が将来のリスクにしっかり備えられるか、自分が必要とする保障が確保できるかを優先して選ぶことをおすすめします。
もし最初から配当金に期待せず、保険料をできるだけ抑えたいのであれば、無配当保険を選んでおくのが無難かもしれません。
5年ごと利差配当付終身保険の配当金を受け取る方法
5年ごと利差配当付終身保険の配当金は、以下4つの受け取り方法が一般的です。
受け取り方法 | 内容 |
積立方式 | ・配当金を保険会社に積み立てておく方法 ・配当金に利息がつき、途中引き出しも可能 ・満期や死亡時は保険金と合わせて受け取る |
買増方式 | ・配当金を一時払の保険料として充当し、保険金を買い増し(増額)する方法 ・保障を手厚くできる |
相殺方式 | ・保険料から配当金を差し引く方法 ・保険料の負担を減らせる |
現金支払方式 | ・配当金を現金で受け取る方法 ・配当金が少ない場合は積立・買増・相殺方式を選択するメリットが少ないため、現金支払方式が選ばれるケースもある |
配当金の受け取り方法は保険会社によっても異なるため、受け取り方法については事前に確認しておきましょう。
5年ごと利差配当付終身保険の配当金にかかる税金
5年ごと利差配当付終身保険の配当金にかかる税金は、配当金を受け取るタイミングによって異なります。
契約期間中に配当金を受け取る場合は、課税対象外です。生命保険料控除を申請するときは、払い込んだ保険料から受け取った配当金を差し引く必要があります。
また、保険金と同時に受け取る場合は、保険金と合わせて課税対象になります。課税される税金の種類は、契約者・被保険者・保険金の受取人の関係性によっても異なるため、認識に注意しましょう。
例えば、死亡保険金を受け取った場合の課税関係は以下の通りです。
契約者 | 被保険者 | 保険金受取人 | 税金の種類 |
A | A | B | 相続税 |
A | B | A | 所得税 |
A | B | C | 贈与税 |
まとめ
保険会社は契約者から集めた保険料を、債券や株式などで運用しています。その際、あらかじめ予想される運用収益を基に保険料を設定していますが、実際には運用成績が予想を上回ることもあります。5年ごと利差配当付終身保険は、その余剰分を5年ごとに契約者へ配当金として分配する仕組みを持つ保険商品です。
ただし、配当金の支払いは保険会社の運用成績次第であり、金額や受け取りが保証されているわけではありません。そのため、必ずしも無配当保険よりもお得になるとは限らない点に注意が必要です。
保険を選ぶ際は、配当金に期待を寄せすぎるのではなく、保障内容が自分のニーズやライフプランに合っているかを最優先に考えることが大切です。
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP