NISAの投資先で人気の「オルカン」とは?メリットや見逃しがちな注意点も解説

投資

NISAの投資先として「オルカン」と呼ばれる商品が注目されています。オルカンは、全世界の株式に幅広く投資できる投資信託です。分散効果が高く、長期の資産形成に適しているため、多くの人気を集めています。ただし、投資する際に注意すべきポイントもあるため、しっかり商品の中身を理解しておきましょう。

本記事では、オルカンの特徴やメリットに加え、投資する際の注意点をわかりやすく解説します。

オルカンとは?

「オルカン」とは、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」という投資信託の通称です。

そもそも、投資信託とは投資家から集めた資金を複数の株式や債券などに投資して、専門家が運用する商品です。投資方針や運用手法はファンドによって違いがあり、オルカンの場合は「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(MSCI ACWI)」という株価指数との連動を目指しています。

MSCI ACWIは、先進国・新興国の株式市場に上場する約2,760銘柄で構成されており、2024年7月末時点で世界の株式時価総額の約85%をカバーしています。そのため、オルカンに投資すれば、全世界の株式に幅広く分散投資することが可能です。

オルカンと他の全世界株式インデックス・ファンドの違い

全世界の株式市場の動きに連動する投資成果を目指すインデックス・ファンドは、オルカン以外にも複数存在します。

連動指数 純資産総額 信託報酬(年率)
eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー) MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス 4兆7,334.01億円 0.05775%
eMAXIS Slim全世界株式(除く日本) MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(除く日本) 6,085.31億円 0.05775%
たわらノーロード 全世界株式 MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス 788.83億円 0.1133%
SBI・全世界株式インデックス・ファンド FTSE グローバル・オールキャップ・インデックス 2396.33億円 0.1022%
楽天・全世界株式インデックス・ファンド FTSE グローバル・オールキャップ・インデックス 5553.23億円 0.132%
SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド FTSE グローバル・オールキャップ・インデックス 493.12億円 0.1338%

(2024年11月19日時点)

最も純資産総額が大きく、信託報酬が安いのはオルカンです。また、オルカンはMSCI ACWIを連動対象としているのに対して、「FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス(FTSE GACI)」を連動対象としているファンドもあります。

FTSE GACIは、約8,000銘柄の先進国及び新興国株式で構成されている株価指数です。MSCI ACWIとの違いとして、小型株を構成対象に含んでいる点が挙げられます。

オルカンに投資する4つのメリット

オルカンに投資するメリットは、以下の通りです。

  • 世界中の株式に分散投資できる
  • 世界経済の成長に投資できる
  • 低コストで運用できる
  • 純資産総額が大きい

それぞれの項目について、詳しくみていきましょう。

世界中の株式に分散投資できる

オルカンは、MSCI ACWIをベンチマークにしたインデックス・ファンドです。

先述した通り、オルカンに投資することで全世界の株式に幅広く分散投資できます。先進国や新興国だけに絞って投資する場合に比べるとリスクを抑えられるため、安定した成長に期待ができます。

世界経済の成長に投資できる

世界経済の成長を取り込める点もオルカンの大きなメリットです。

世界人口は増加傾向にあり、それに伴い消費が増加し、経済が拡大していくと考えられます。IMF(国際通貨基金)が2024年10月に発表した「世界経済見通し」でも、世界経済は今後も安定して成長を続ける見込みが示されています。

オルカンには、以下のように世界経済をリードする大企業も多く含まれているため、今後の成長に期待できるでしょう。

構成銘柄 組入比率
エヌビディア 4.3%
アップル 4.2%
マイクロソフト 3.8%
アマゾン 2.3%
メタ 1.6%
アルファベット 1.3%
アルファベット 1.1%
バークシャー・ハサウェイ 1.0%
台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー 1.0%
テスラ 0.9%

(2024年10月31日時点)

低コストで運用できる

オルカンに投資するメリットとして、低コストで運用できる点も挙げられます。オルカンは、購入時にかかる手数料や、信託財産保留額(売却時にかかる手数料)が共に無料であり、信託報酬率は純資産総額に対して0.05775%以内です。

ほかの全世界株式ファンドと比べても、オルカンのコスト面での優位性は際立っています。例えば、「たわらノーロード 全世界株式」の信託報酬率は0.1133%で、オルカンのほうがコスト面に優れているといえるでしょう。コストが低いほど、運用リターンが目減りしにくくなるため、長期投資において有利に働く可能性があります。

純資産総額が大きい

投資信託は純資産総額が少ないと運用継続が難しくなり、繰上償還が行われることがあります。繰上償還が行われると運用が中断するため、タイミングによっては損失を招く可能性もあります。

しかし、オルカンは純資産総額が大きいため、そのようなリスクが少ない点が魅力です。

【おすすめしない?】オルカンに投資する際の注意点

オルカンは、全世界の株式に分散投資できる魅力的なファンドですが、以下の点に注意が必要です。

  • 値動きが激しくなることもある
  • 米国に投資先が集中しやすい
  • 為替の影響を受ける

それぞれについて、詳しくみていきましょう。

値動きが激しくなることもある

オルカンは全世界の株式を対象としていますが、必ずしも安定した値動きをするとは限りません。株式市場が暴落すれば、オルカンの基準価額も大きく下落する可能性があります。例えば、過去のコロナショックでは1年の間に約30%値下がりしたケースがありました。そのため、投資タイミングによっては大きな損失を出してしまうこともあるでしょう。

とはいえ、長期的には右肩上がりで成長を続けています。短期的な値動きに一喜一憂せず、長期的な視点で運用を続けることが大切です。

米国に投資先が集中しやすい

オルカンは「全世界株」とされていますが、その投資割合は6割以上が米国株となっています。さらに、先進国株と新興国株の比率は9:1と、偏りがある点に注意が必要です。

これは、オルカンが連動対象としているMSCI ACWIが「時価総額加重平均型」の指数であり、時価総額の大きい企業が多い米国株の割合が高くなりやすいためです。

オルカンの運用成果は、実際には米国経済に大きく依存することになります。そのため、分散投資によってリスクを軽減したい場合には、株式だけでなく債券型の投資信託などにも投資したほうがよいでしょう。

為替の影響を受ける

オルカンは外貨で運用されているため、為替相場の影響を受けます。例えば、円安が進むと、実際の運用成果以上に基準価額が上昇しているようにみえるでしょう。一方で、円高が進むと、運用が順調でも為替の影響でリターンが目減りすることもあります。

オルカンのような投資信託では、為替ヘッジがないため為替リスクをそのまま引き受ける形となります。そのため、為替相場が気になる場合やリスクを抑えたい場合には、為替ヘッジ機能のある投資信託を併用することや、為替リスクを軽減するために円建て資産を含むポートフォリオを組むことを検討するとよいでしょう。

オルカンとS&P500、どっちに投資すればよい?

オルカンとS&P500のどちらを選ぶべきかは、投資の目的やリスク許容度(損失をどのくらいまで受け入れられるかという度合いのこと)などによって異なります。それぞれの特徴を比較し、自分に合った投資先を選びましょう。

eMAXIS Slim全世界株式
(オール・カントリー)
eMAXIS Slim米国株式
(S&P500)
連動指数 MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス S&P500
トータルリターン(5年) 19.34% 23.51%
純資産総額 4兆7,334.01億円 6兆361.93億円
信託報酬 0.05775% 0.09372%

オルカンの投資先はアメリカを中心としながらも、新興国や先進国の企業も含まれており、リスク分散効果が期待できます。そのため、リスクを抑えつつ、世界経済全体の成長を取り込むことを目指したい人におすすめです。

一方で、S&P500は、アメリカを代表する500社の株式で構成されるS&P500指数に連動しています。

アメリカの経済成長を積極的に取り込むことが可能で、過去5年間のトータルリターンは23.51%とオルカン(19.34%)を上回っています。アメリカ経済を信頼して投資できる場合には、S&P500が魅力的な選択肢といえるでしょう。ただし、投資先がアメリカに集中するため、アメリカ経済が不調となった場合の影響は大きくなります。

まとめ

オルカンは、全世界の株式に幅広く分散投資できる投資信託で、世界経済の成長を取り込める低コストの投資先として多くの投資家から支持を集めています。

ただし、「全世界株」とはいえ、その投資先の多くは米国株に偏っており、完全な分散投資ができるわけではない点には注意が必要です。また、元本保証がある商品ではないため、株式市場の暴落時には基準価額が大きく下がる可能性もあります。

オルカンに投資する際は、商品内容について十分理解を深めたうえで、自分の投資目的やリスク許容度に合っているかを確認しておきましょう。

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オカネノホンネ編集部

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