がん保険には、契約後しばらくの間、保険金や給付金を受け取れない「免責期間(不てんぽ期間)」が設定されている場合があります。この期間中にがんと診断された場合、保険金や保険料がどのように扱われるのか気になる方も多いでしょう。
この記事では、免責期間中の保険金や給付金に関するルールや、免責期間における注意すべきポイントをわかりやすく紹介します。
目次
がん保険の免責期間中にがんと診断されたらどうなる?
がん保険における「免責期間(不てんぽ期間)」とは、保険加入後も一定期間は保障が適用されない期間を指します。この間にがんと診断された場合、契約の取り扱いが通常とは異なる点に注意が必要です。
医療保険では、一般的に以下の手続きを踏まえて、保険会社が契約を承諾した時点で保障が開始されます。
- 「契約の申込み」
- 「告知・医師の診査」
- 「第1回保険料の支払い」
契約成立後は、告知や医師の診査が完了し、初回の保険料が支払われた日を「契約日=責任開始日」とし、保障が始まります。
一方で、がん保険の場合、契約日から一定期間が経過した後を責任開始日とする契約が多く見られます。この「契約日から責任開始日までの期間」が免責期間(不てんぽ期間)です。免責期間は、一般的に3ヶ月または90日間に設定されています。
基本的に契約は無効となる
免責期間内にがんと診断された場合、契約者や被保険者がその事実を認識していたかどうかに関係なく、多くの場合は契約が無効とされます。
この場合、契約はさかのぼって成立しなかったものとみなされるため、がん診断給付金や死亡保険金などの保険金は支払われません。ただし、払い込んだ保険料は返金される可能性があります。
告知義務違反の場合は契約解除になる
加入時にがん罹患の事実やその疑いを隠していた場合、免責期間中にがんと診断されると、「告知義務違反」として契約が解除されることがあります。
保険会社は公平性を保つため、契約時に健康状態や既往歴の告知を求めています。正確な情報が提供されない場合、リスク評価が適切に行われず、他の契約者との公平性が損なわれるため、厳格な対応が取られます。
契約解除となった場合、無効とみなされるケースとは異なり、払い込まれた保険料が返還されることは基本的にありません。
ただし、以下のような状況では契約解除が認められない場合もあります。
- 保険会社が契約時に事実を知っていた、または過失により知らなかった場合
- 保険募集人が告知を妨げたり、違反を助長したりした場合
告知義務違反による契約解除は、契約者にとって重大な不利益をもたらします。そのため、契約時には自身の健康状態や既往歴を正確に申告することが重要です。
がん保険の免責期間中に健康診断を受けるとどうなる?
がん保険の免責期間(不てんぽ期間)中に、健康診断や人間ドックを受けること自体は特に問題ありません。保険の審査は、加入時点での健康状態をもとに行われるため、契約後の検査で異常が見つかったとしても、契約に影響を及ぼすことは少ないと考えられます。
しかし、健康診断や人間ドックでがんが発見された場合は注意が必要です。このようなケースでは、免責期間中にがんと診断されたとみなされ、契約が無効になる可能性が高まります。契約が無効と判断された場合、がん診断給付金やその他の保障は受け取ることができなくなります。
診断結果を隠して免責期間を過ぎてから保険金や給付金を請求したとしても、いずれ保険会社に知られて契約が無効になる可能性は高いため、健康診断で異常が見つかった際は速やかに保険会社に申告しましょう。
がん保険に90日の免責期間が設定されている理由は?
がん保険に90日の免責期間(不てんぽ期間)が設定されている理由は、契約者間の公平性を保つためです。
がんの初期段階では自覚症状がないことも多く、自身ががんであることに気づかないまま保険に加入し、契約直後にがんと診断されるケースが少なくありません。
また、急激な体重の減少や不正出血などの自覚症状が出たときに不安を感じ、急いでがん保険に加入しようとする人もいるかもしれません。基本的に保険に加入する時点で医師からがんの診断を受けていなければ、保険会社の審査を通過できる可能性があるため、このような人に対しても給付金が支払われてしまう可能性があります。
このようなケースで即座に給付金が支払われることになり、他の加入者との公平性を損なう可能性があるため、免責期間が設定されています。
がん保険の免責期間に関する注意点
がん保険に新しく加入する際は、以下のポイントを理解しておきましょう。
- 免責期間(不てんぽ期間)中も保険料の支払いが必要
- 乗り換えの際は空白期間を作らない
それぞれについて、以下で詳しく解説します。
免責期間(不てんぽ期間)中も保険料の支払いが必要
がん保険では、免責期間中であっても保険料の支払いが必要です。保険料の未納が続くと、保険契約自体が解除される可能性があります。
ただし、多くのがん保険では、免責期間があることを前提として保険料が設計されています。つまり、免責期間を含めた全期間で保険料の支払い額が均等になるように算出されているため、免責期間中の保障の対価が発生することは基本的にないでしょう。
もし、保障が受けられない期間に保険料を支払うことに抵抗を感じる場合は、免責期間中の保険料が発生しないタイプのがん保険を検討してみるのも1つの方法です。
乗り換えの際は空白期間を作らない
既存のがん保険から乗り換える形で新しくがん保険に入る場合は、保障の空白期間が生じないようにしてください。
保障の空白期間とは、保険を切り替える際に発生する無保険の期間を指します。この期間中に保険の支払事由が発生した場合、保険金や給付金を受け取ることができません。たとえば、新しいがん保険の保障が開始する前に、現在の保険を解約してしまうと、空白期間が生じる可能性があります。
こうした空白期間を防ぐには、新しく加入する保険の保障が始まる日まで、現在加入中の保険を解約せず継続しておくことが重要です。
なお、同じ保険会社内での乗り換えであれば「条件付き解約」という制度を活用できる場合もあります。条件付き解約とは、既契約を解約し新契約に加入する場合において、保険期間を途切れさせることなく、新契約の締結と既契約の解約を行う制度です。
この場合、保険料の二重払いが不要になるだけでなく、免責期間中にがんと診断された場合は、乗り換え後の契約を無効にして旧契約を復活させることが可能です。条件付き解約を利用すれば、空白期間を避けながら新しい保険に移行しやすくなるでしょう。
ただし、取り扱いの有無や条件については保険会社によって異なるため、個別に確認することをおすすめします。
免責期間が設定されていないがん保険は存在する?
免責期間(不てんぽ期間)がないがん保険も、数は少ないものの一定数存在します。免責期間がないがん保険は、加入直後にがんに罹患した場合でも、一定の給付を受けられます。
ただし保障内容は限定的で、給付金額が少ない、通院給付金は受け取れないといったケースが少なくありません。また、定期タイプの商品が主流であるため、更新のたびに保険料が上がる可能性があります。
がん保険の契約を検討する際は、保険料と保障内容のバランスを考慮し、自分のニーズに合った商品かどうかを慎重に判断しましょう。
まとめ
免責期間(不てんぽ期間)中にがんと診断されたとしても、保険金や給付金を受け取ることはできません。この場合の契約は無効となるため、支払った保険料は返還されるのが一般的です。
ただし、加入時に健康状態を偽った場合には告知義務違反として契約が解除され、保険料が返還されないケースもあります。適切な保障を受けるために、加入時には健康状態を正確に告知しましょう。
なお、以下の記事で「がん保険」の選び方について詳しく紹介しています。気になる方は、ぜひご一読ください。
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP