発達障害があると生命保険に入れない?グレーゾーンでも入れる保険を紹介

保険全般

発達障害は、子どもだけでなく大人になってからでも診断されるケースがあります。厚生労働省より実施された調査によると、発達障害と医師から診断された患者数は、2016年時点で日本国内に48万1,000人存在すると発表されています。

生命保険に加入する際は、健康状態について告知が必要です。発達障害と診断された人のなかには、生命保険に加入できるのか不安に感じているのではないでしょうか。

そこで本記事では、発達障害と診断された場合の保険加入の可否について、詳しく解説します。

発達障害があっても生命保険に入れる

結論からいうと、発達障害があっても生命保険に加入することは可能です。しかし、加入できる保険の範囲は、通常よりも限られます。

生命保険に加入する際は、保険会社へ「告知」が必要です。告知とは、現在の健康状態や過去の傷病歴を伝えることを指します。

保険会社所定の「告知書」を使い、以下のような質問に回答するのが一般的です。

  • 告知日時点での入院・手術予定の有無
  • 過去5年以内の入院・手術・通院歴
  • 過去のがん罹患経験の有無
  • 身体障害の有無

告知事項に該当する項目があった場合は、治療や投薬の状況などを詳細に回答しなければなりません。その回答内容を考慮して保険会社が審査を行うことになるため、リスクが高いと判断された場合には審査を通過できない可能性があります。

なお、発達障害で通院や服薬をしている場合は、告知項目に該当する可能性が高く、一般的にリスクが高いと判断されることが多いため、審査を通過できないケースも珍しくありません。

しかし、保険会社によって審査は異なるため、病状によっては審査に通過できるケースもあるでしょう。

発達障害を告知する際に何を伝えればよい?

発達障害の人が生命保険に申し込む際は、以下の項目について告知が必要になるケースが一般的です。

  • 診断名
  • 治療内容
  • 治療期間
  • 服薬名
  • 社会生活の現況
  • 就業の状況

発達障害といっても、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)など症状はさまざまであるため、現在の治療方法や診断名などをなるべく詳細に告知しましょう。

保険会社は、最悪の状態を想定して審査を進める傾向があるため、曖昧な内容で告知をすると、保険引き受けのリスクが高いとみなされる可能性が高くなります。

なお、保険会社の営業担当者に口頭で健康状態を伝えても、告知したことにならないので注意しましょう。

虚偽の申告をした場合はどうなる?

告知は、保険会社がリスクを適切に評価し、契約者間の公平性を保つためにあります。

告知項目に該当することを避けるために、事実を告知しなかったり、事実異なることを告知したりした場合は「告知義務違反」になってしまいます。告知義務違反が発覚すると、保険契約は解除され、基本的に保険金や給付金も支払われません。

虚偽の告知とならないように、告知方法に迷った場合は担当者に相談しましょう。

発達障害の人が入りやすい保険とは

発達障害の人でも告知内容次第では、一般的な生命保険に加入できるケースもあります。もし加入を断られた場合は、健康状態に不安のある人でも加入しやすい引受基準緩和型の生命保険も検討してみましょう。

一般的な生命保険

発達障害の人でも、一般的な生命保険に加入できる場合があります。この理由は、保険会社は「発達障害」の診断名だけではなく、症状や治療歴などを加味して個別に加入の可否を判断するケースが多いためです。

たとえば、症状が落ち着いており問題なく日常生活を過ごせている状態と、判断能力に欠けている状態とでは、加入後のリスクが異なります。それに伴って、加入可否の判断も大きく変わる可能性が高いでしょう。

先述した通り、保険会社によって審査基準は異なるため、1社で断られても他社では審査に通過できる可能性もあります。発達障害で一般的な生命保険に加入したい場合は、複数の商品を検討してみるとよいでしょう。

引受基準緩和型の生命保険

もし、一般的な生命保険への加入を断られた場合は、「引受基準緩和型」の生命保険を検討しましょう。

引受基準緩和型保険は、告知の項目が3つ程度に絞られており、持病や既往症があっても加入しやすい保険です。保険加入前の持病が悪化した場合も保障されるため、発達障害を原因とした入院・死亡でも、給付金や保険金を受け取れる可能性があります。

ただし、保険料は一般的な生命保険と比べて、割増されていることがほとんどです。加入してから一定期間は保障が削減される商品も存在するため、あくまでも一般的な生命保険への加入が難しい場合に、加入を検討するようにしましょう。

発達障害の人が入れる「ぜんちのあんしん保険」とは

ぜんちのあんしん保険は、障害のある人専門の保険会社である「ぜんち共済株式会社」が取り扱う少額短期保険です。同社は、全国の知的障害者とその関係者に向けて福利厚生制度を提供する「全国知的障害者共済会」を前身としています。

保障内容について

ぜんちのあんしん保険は、保障内容や保険金額の異なる5つのプランから選択可能です。万が一の保障や、病気やケガによる入院・手術の保障、賠償などがセットになっています。保険期間は1年で、年齢や性別による保障内容や保険料の違いはありません。

ここでは一例として、「おすすめプラン」の保障内容を紹介します。

万が一の保障 死亡保険金:10万円
特定疾病死亡保険金:10万円
特定重度傷害保険金:10万円
病気やケガの保障 入院保険金:1日につき7,000円
特定疾病入院保険金:1日につき3,000円
入院一時金:10,000円
手術保険金:20,000円
傷害通院保険金:1日につき3,000円
トラブルに備える補償 法律相談費用:5万円(実費)
弁護士委任費用:100万円(実費)
接見費用:1万円(実費)
他人に損害を与えたときの補償 東京海上日動の示談交渉サービス付き
個人賠償責任保険:5億円
月額保険料 1,700円
※初回のみ6,200円

※2024年6月時点

加入要件について

ぜんちのあんしん保険への加入が可能な年齢は、満5歳~満74歳まで(一部プランは満64歳まで)です。

なお、加入対象の範囲は以下となります。

  • 知的障害
  • 発達障害(自閉スペクトラム症、ADHDなど)
  • ダウン症
  • てんかん
  • 上記に該当する方とその家族や親族
  • ぜんち共済株式会社が認める人 など

なお、加入にあたって、健康告知や医師の診断書の提出は不要です。

発達障害がある子どもに備えられる保険

発達障害がある子どものために教育資金や生活資金を備えておきたい場合は、以下で紹介する保険・共済への加入を検討しましょう。

将来の教育資金に備える「学資保険」

学資保険とは、子どもの教育資金を計画的に備えられる保険です。進学時期に合わせて祝金や満期保険金を受け取れます。

学資保険では、契約者を親、被保険者を子、祝金や満期保険金の受取人を親とするのが一般的です。契約者の告知だけで加入できる商品もあるため、子どもに発達障害があっても加入できる可能性があります。

保護者が子どもために残せる「障害者扶養共済」

障害者扶養共済は、保護者の生存中に毎月一定の掛金を支払うことで、保護者に万が一(死亡・重度障害)のことがあった際に、障害のある方へ終身年金が支給される公的制度です。この制度は、都道府県・指定都市が条例にもとづいて実施しています。

掛金月額は、加入時の年度の4月1日時点の保護者の年齢によって決まり、1口あたり9,300円~23,300円(2024年6月時点)です。保護者が死亡した場合や重度障害になったときは、毎月2万円(1口あたり)の年金が一生涯支給されます。

なお、掛金は全額小規模企業共済等掛金控除として、所得控除の対象です。

毎月の保険料が積み立てられる「貯蓄性のある保険」

貯蓄性のある保険(貯蓄型保険)とは、保険料の一部が積み立てられ、満期や解約時に満期保険金や解約返戻金として、まとまったお金を受け取れる保険です。

個人年金保険などの死亡保障がほとんどない貯蓄型保険は、職業告知のみで加入できるケースも多くなっています。

親が契約者・保険金受取人になり、満期保険金や解約返戻金を子どもの進学費用などに充てれば、学資保険と同じような使い方ができるでしょう。

まとめ

発達障害の人でも、正しく告知をすれば、一般の生命保険や引受基準緩和型保険に加入できます。入院や損害賠償請求など、日常生活を過ごすうえで起こり得るリスクに幅広く備えたい場合は、発達障害の人でも告知不要で加入できる「ぜんちのあんしん保険」も検討してみましょう。

また、発達障害のある子どもの生活費用や、教育費用などへの備えをしておきたい保護者は、学資保険や障害者扶養共済などへの加入をおすすめします。

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オカネノホンネ編集部

オカネノホンネ編集部

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