生命保険と医療保険の違いとは?両方に加入するメリットや注意点を紹介

保険全般

生命保険と医療保険は「日常生活に潜む万が一のリスクに備えられる」という点は共通しています。しかし、加入目的や、保障内容など、具体的な違いについて理解していない人も多いでしょう。

本記事では、生命保険と医療保険の違いや、それぞれどのような人に向いている保険なのか、わかりやすく解説します。生命保険の必要性に疑問を感じている人や、どちらの保険に加入すべきか悩んでいる人は参考にしてください。

生命保険と医療保険5つの違いとは?

生命保険と医療保険には、下記のような違いがあります。

生命保険 医療保険
加入目的 家族の生活を守る 医療費に備える
保障内容 死亡や高度障害状態に対する保障 病気やケガに対する保障
保険金・給付金の支払われ方 基本的に1回のみ支払われる 支払事由に該当するたびに支払われる
保険金・給付金の受取人 被保険者の家族 被保険者本人
保険金・給付金への課税有無 課税対象 非課税

なお、どちらも加入申し込み時に「告知」が必要です。告知とは、保険会社に被保険者の現在の健康状態や過去の傷病歴を伝えることで、告知をもとに加入の審査が行われます。

また、広義に解釈すると医療保険は、生命保険の一種として分類されることもあります。

加入目的

生命保険は、被保険者に万が一のことがあったとき、残された家族に生活費や教育費、住宅ローンの返済など、経済的な負担がかからないようにすることを目的としています。
一方で、医療保険は、被保険者が病気やケガをした際の治療費に備えることが主な目的です。治療費の自己負担が経験されることで、安心して治療に専念できる環境を整えられます。

保障内容

生命保険では、被保険者が死亡した場合に死亡保険金、高度障害状態になった場合に高度障害保険金が支払われます。

一方で、医療保険は、病気やケガをして入院や手術が必要になった場合に給付金が支払われるのが特徴です。

保険金・給付金の支払われ方

生命保険では、被保険者が死亡した場合に一括で保険金が支払われるのが一般的です。契約に基づいて、あらかじめ設定された保険金額が事前指定した受取人に支払われます。一度保険金が支払われると、基本的に契約は消滅します。

一方で、医療保険は、被保険者が入院や手術など、支払事由に該当するたびに給付金が支払われます。入院日数や手術の種類に応じて、給付金が計算されて支払われる形式になっており、契約上の上限内であれば複数回受け取ることも可能です。

保険金・給付金の受取人

生命保険では、被保険者が指定する遺族が保険金を受け取ります。多くの保険会社が受取人に指定できる遺族を、戸籍上の配偶者や2親等以内の血族・親族(子・両親・兄弟姉妹など)としています。一部の保険会社では、内縁関係・同性パートナーなどを受取人に指定することも可能です。

一方で、医療保険は、治療費の負担を軽減するために給付金が支払われるので、治療を受けた本人が受け取ることが一般的です。

ただし、指定代理請求制度を利用できるケースでは、「病気やケガが理由で請求の意思表示ができない」「治療上の都合で傷病名や余命の告知を受けていない」など、被保険者本人に特別な事情がある場合、あらかじめ指定した代理人が給付金を請求することもできます。なお、指定代理請求人の範囲は、戸籍上の配偶者や3親等内の親族などに限られることが一般的です。

保険金・給付金への課税有無

生命保険の死亡保険金は契約者や受取人が誰になるかによって、下記のように課税される税金の種類が異なります。

契約者 被保険者 保険金受取人 税金の種類
相続税
所得税
贈与税

一方で、医療保険で受け取る入院給付金や手術給付金、通院給付金などは基本的に非課税です。

生命保険(死亡保険)の種類

生命保険にはさまざまな種類があり、それぞれに異なる特徴があります。具体的にどのような種類があるのか、以下でみていきましょう。

保障が一生涯続く「終身保険」

終身保険とは、保障が一生涯にわたって続く死亡保険を指します。

保険料は加入時のまま一定であり、途中で変わることはありません。解約時に解約返戻金が支払われるため、貯蓄性も兼ね備えています。

終身保険について、以下の記事で詳しく解説しています。内容について詳しく知りたい人は、ぜひご一読ください。

保障期間が決まっている「定期保険」

定期保険とは、一定年数もしくは一定年齢まで保障される死亡保険を指します。

基本的に掛け捨ての商品になるため解約返戻金はほとんどなく、保険期間中に万が一のことがなければ、満期保険金を受け取れません。

その代わり、保障内容が同程度であれば、終身保険よりも割安な保険料で加入できる商品が多く存在します。

定期保険について、以下の記事で詳しく解説しています。内容について詳しく知りたい人は、ぜひご一読ください。

合理的に保障を準備できる「収入保障保険」

収入保障保険とは、被保険者が死亡した場合に満期になるまで、毎月一定額の保険金が支払われる保険を指します。

定期保険の一種ですが、保険期間の経過とともに保険金を受け取れる期間が短くなるため、受け取れる保険金の総額は減少していく点に違いがあります。そのため、定期保険よりもさらに割安な保険料で加入できるケースが一般的です。

多くの場合、子どもの成長に伴って、必要となる保障額は減少していくため、収入保障保険は万が一の事態に対して合理的に備えられる保険といえるでしょう。

収入保障保険について、以下の記事で詳しく解説しています。内容について詳しく知りたい人は、ぜひご一読ください。

満期保険金を受け取れる「養老保険」

養老保険とは、万が一の保障と貯蓄の両方を兼ね備えた保険を指します。

一定の保険期間内に被保険者が死亡した場合には、死亡保険金や高度障害保険金が支払われます。一方で、万が一のことが起きることなく満期を迎えた場合は、死亡保険金と同額の満期保険金が支払われるのが特徴です。

貯蓄性が高いため、保険金額が同程度であれば定期保険よりも保険料が割高になる傾向があります。

養老保険について、以下の記事で詳しく解説しています。内容について詳しく知りたい人は、ぜひご一読ください。

医療保険の種類

医療保険は、都道府県や市区町村などが運営する「公的医療保険」と、民間の生命保険会社が販売する「民間医療保険」の2種類に分かれます。

全国民に加入が義務付けられている「公的医療保険」

公的医療保険制度は、日本の全国民に加入が義務付けられている制度です。

医療機関の窓口で保険証を提示すると、年齢や所得に応じて窓口で自己負担する金額が1~3割になります。公的医療保険は、大きく下記の3種類に分けられます。

  • 被用者保険:会社員や公務員などが加入する
  • 後期高齢者医療制度:原則として75歳以上が加入する
  • 国民健康保険:被用者保険や後期高齢者医療制度に未加入の人を対象とする

ひと月(1日から月末)の間に支払った医療費が、年齢や所得に応じた上限額を超えた場合には「高額療養費制度」によって超過分の払い戻しを受けることが可能です。

また、被用者保険の加入者は、病気やケガで会社を休んだ際に給付金を受け取れる「傷病手当金」の制度を利用できます。

公的医療保険について、以下の記事で詳しく解説しています。内容について詳しく知りたい人は、ぜひご一読ください。

生命保険会社が取り扱う「民間医療保険」

民間医療保険は、公的医療保険ではカバーできない部分を補完するための保険です。

医療費の自己負担分や個室などを利用する際にかかる「差額ベッド代」、入院中の食事代・雑費、先進医療の技術料や自由診療費など、公的医療保険が適用されない費用の負担に備えられます。

なお、民間の医療保険にはさまざまな種類があります。以下で詳しくみていきましょう。

幅広い病気やケガを保障する「一般的な医療保険」

一般的な医療保険では、幅広い病気やケガに備えられます。

契約内容に応じて、入院給付金や手術給付金などが支払われますが、給付金が支払われる日数や、対象となる手術については保険会社ごとに違いがある点に注意が必要です。なお、主契約に加えて特約を付加することで、保障を充実できます。

がんに特化している「がん保険」

がん保険は、がんに特化した医療保険です。

がんと診断された場合に「診断給付金」や、がんで入院したときに「がん入院給付金」などが支払われます。高額になりがちながん治療の費用に備えられるのが特徴です。

三大疾病に手厚く備えられる「三大疾病保険」

三大疾病保険は「がん・心疾患・脳血管疾患」といった三大疾病で治療が必要になった場合に備えられる保険です。

三大疾病を原因として保険会社が定める所定の状態になったときに、一時金が支払われる商品が多くなっています。なお、保険会社によっては、被保険者が死亡もしくは、高度障害状態になった際に、保険金が支払われます。

女性特有の病気をカバーできる「女性保険」

女性保険は、女性特有の病気で入院や手術などをした際に、給付金が上乗せされる医療保険です。

女性特有の病気として、乳がんや子宮がんなどが挙げられます。なお、給付金の上乗せ対象になる病気の種類は、保険会社や商品によって異なります。

生命保険に加入したほうがよい人

生命保険は、残された家族に経済的な負担をかけないために備える保険です。そのため、自身に万が一のことがあった際に、配偶者や子どもの生活が困窮する可能性がある人は加入したほうがよいでしょう。また、亡くなった際の葬儀費用を残しておきたい人にもおすすめです。

また、終身保険のように、契約期間に応じて解約返戻金が増加する保険もあるため、保障を確保しつつ貯蓄もしたい人にも向いています。

医療保険に加入したほうがよい人

貯蓄が少なく、病気やケガで入院や手術をする場合の治療費の支払いに不安がある人は、医療保険に加入しておくと経済的な不安を軽減できるでしょう。

また、がんのように治療費が高額になる可能性がある病気に備えたい人や、先進医療や自由診療など自己負担が高額になった場合に備えておきたい人にも適しています。

生命保険と医療保険の両方に加入するメリット

生命保険は被保険者の万が一に備える保険であり、医療保険は病気やケガの治療費に備える保険です。両方に加入すれば、それぞれの特徴を活かすことができるため、カバーできるリスクが広がり、安心感が増すでしょう。

また、生命保険と医療保険の両方に加入すれば、それぞれの保険料に対して生命保険料控除を受けられる場合があります。

生命保険料控除とは、1年間に支払った保険料に応じて、所得から控除を受けられる制度です。生命保険料控除には、一般生命保険料控除・介護医療保険料控除・個人年金保険料控除の3つの控除枠があり、それぞれ最大で所得税は4万円、住民税は2.8万円の控除を受けられます。
※契約日が2012年1月1日以降の契約を対象とする「新制度」の場合。3つの控除枠を合計した適用限度額は、所得税が12万円、住民税が7万円です。

たとえば、一般的な生命保険と医療保険に加入した場合は、一般生命保険料控除と介護医療保険料控除の両方を受けられる可能性があります。なお、所得控除の金額が大きくなれば、所得税や住民税の負担をより軽減できる可能性があるでしょう。

生命保険料控除について、以下の記事でも詳しく解説しています。計算方法や申請方法について知りたい人は、ぜひご一読ください。

生命保険と医療保険の両方に加入する際の注意点

生命保険と医療保険の両方に加入する場合、「保険料の総額が増える」ことに注意が必要です。家計に負担がかかる可能性があるため、自身の生活状況やリスクを考慮したうえで、必要な保障を選びましょう。

また、加入方法にも注意が必要です。請求手続きや管理のしやすさを重視する場合、できる限り1つの商品にまとめて加入することをおすすめします。なお、生命保険会社によっては、死亡保障や医療保障など、契約者のニーズに合わせて必要な保障を1つの保険に組み込めるタイプの商品もあります。

しかし、主契約に特約を組み合わせて加入する商品の場合、主契約を解約すると特約は消滅してしまうため、柔軟な見直しがしにくい点には注意が必要です。また、どの保障に対して保険料をどのくらい支払っているのか、不明瞭になる可能性もあります。

見直しのしやすさを重視するのであれば、生命保険と医療保険を別々の保険会社で加入するのも1つの方法です。別々に加入しておけば、各保険の契約内容や保険料を定期的に見直し、最適なプランに変更しやすくなります。

まとめ

生命保険と医療保険の主な違いは、「加入目的」や「保障内容」にあります。生命保険は主に被保険者が死亡した際に家族の生活を守り、医療保険は病気やケガの治療費に備えます。

両方に加入することで幅広いリスクに備えられますが、保険料の負担が増えるため、家計に合った必要な保障を選ぶことが重要です。自身にとってどの保険に加入するのが最適か慎重に見極めたうえで判断するようにしましょう。

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オカネノホンネ編集部

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