医療保険は定期?終身?どっちがおすすめ?

医療保険とは

医療保険には「定期」と「終身」、2種類のタイプが存在します。何がどう違うのか、どちらを選ぶべきなのか、悩んでしまう人も多いのではないでしょうか。

この記事では、「定期医療保険」と「終身医療保険」のそれぞれの特徴、メリット・デメリット、向いている人などについて詳しく解説します。

医療保険には「終身」タイプと「定期」タイプがある

そもそも医療保険とは「病気やケガのときにお金が受け取れる保険」のことです。一生涯ずっと保障が続くタイプを「終身医療保険」、一定の期間だけ保障されるタイプを「定期医療保険」と呼んでいます。

2つのタイプの最も大きな違いは「加入できる期間」です。ただそれ以外にも、家計に直結する「保険料」などにも差があります。詳しく見ていきましょう。

終身タイプの医療保険とは?しくみと特徴

終身タイプは、その名のとおり「身」が「終」わるまで、つまり亡くなるまでずっと加入し続けられる保険です。加入してから亡くなるまで、ずっと同じ保障内容、ずっと同じ保険料で続けられるのも特徴です。

 

定期タイプの医療保険とは?しくみと特徴

定期タイプは、一「定」の「期」間だけ加入できる保険です。終身タイプと違い、期間が区切られているのが特徴です。

基本的に、一定期間(10年程度が多い)が経過するごとに、契約が「更新」されていきます。ずっと保険料が同じ終身タイプに対し、定期タイプは更新するたびに保険料が上がっていきます。

若いうちは終身タイプより保険料を抑えやすいのですが、高齢になるころには保険料が上がり逆転します。また、一生涯継続できる終身タイプに対し、定期タイプは保険会社にもよりますが「80歳」などある年齢以降は更新できないようになっています。

生命保険の「定期/終身」と医療保険の「定期/終身」の違い

医療保険は「病気やケガのときに役立つ保険」ですが、生命保険は「亡くなったときに役立つ保険」です。生命保険にも定期タイプと終身タイプがあります。

生命保険の終身タイプ(終身保険)だと、保険料の一部が積み立てられて解約時に受け取れる「解約返戻金」がありますが、医療保険の終身タイプではそれがないのが一般的です。

期間の定めがある生命保険に満期まで加入し続けたときに受け取れる「満期保険金」も、医療保険ではあまり見かけません。

生命保険ではよく「終身タイプ=貯蓄型、定期タイプ=掛け捨て型」と言い換えられます。ただ、医療保険の場合はその多くが掛け捨て型で、「終身タイプ×掛け捨て型」という保険もよくあります。

少々ややこしいのですが、生命保険の「終身/定期」と医療保険の「終身/定期」は中身が多少違いますので、言葉のイメージに惑わされずよく確認するようにしましょう。

「終身」の医療保険のメリット

終身医療保険のメリットとしては、たとえば以下のような点が挙げられます。

保障が一生涯続く

基本的に、高齢者になるほど、病気やケガに見舞われる確率が上がり、入院日数も長くなって医療費がかさむ傾向があります。つまり、医療保険が役に立つ機会が増えるということです。

終身医療保険は、亡くなるまで加入し続けることができます。定期保険のように「〇歳になったから契約終了」ということがありませんので、長生きしても安心できるでしょう。

更新がなく保険料が上がらない

終身タイプには定期タイプのような「更新」がありません。保険に入り続けることができるだけでなく、保険料がずっと変わらないという点も安心につながるのではないでしょうか。

若いうちは「高めの保険料を払っているのに全然受け取れない」と思っていても、長生きして医療費がかかるようになってきたら「保険料が安いうちに入っておいてよかった」と思うかもしれません。

また、定期タイプでありがちな「更新のお知らせを見て、更新後の保険料の高さに驚く」といったことがなく、長期的な家計管理もしやすいでしょう。

ちなみに近年、終身医療保険の中には「ずっと健康なら使わなかった保険料が戻ってくる」という種類も登場しています。保険料の「掛け捨て」を避けたい場合はこういった保険を検討してみるのも1つの方法です。

保険料の払い込み期間を選べる

定期タイプだと基本的に「保険に加入している期間=保険料を支払う期間」となりますが、終身タイプは、保険料をいつまで払い続けるかを自分で選択できます。

一生涯支払い続けること(終身払い)を選択すれば1ヶ月あたりの保険料負担を抑えることができます。

逆に、一定期間までに一生分の保険料を支払い終えること(短期払い)を選択すれば、老後に年金生活に突入するころには支払い終え、その後の費用負担なしで保障だけ存在する状態にすることも可能です。

選択肢が多く、自分の理想の将来像や希望に合わせて設定しやすいのも終身医療保険のメリットの1つです。

「終身」の医療保険のデメリット

終身医療保険のメリットだけでなく、デメリットも知っておきましょう。

若いときの保険料が割高になりやすい

終身医療保険は、一生涯ずっと保険料が変わりません。一方、定期医療保険では、病気やケガの確率が低い若いうちは保険料が安く設定されています。

そのため、保障内容が同じなら、若いうちは終身タイプのほうが保険料が割高になりがちです。

途中で見直すことがなく、古い保険のままになってしまうことも

終身タイプには更新がありません。加入時に契約した保障内容が一生続くのはメリットでもある反面、「ずっとほったらかし」になってしまいやすいので要注意です。

加入してから何十年も経てば、必要な入院日数や費用、社会保障制度なども大きく変わっているかもしれません。

近年だけでも、健康保険の制度改正で一部の高齢者の医療費負担が増したり、医療の進歩で入院日数が短くなったり、新しい技術を使った莫大な費用がかかる治療法が出てきたり、さまざまな変化があります。

最悪の場合、「若い頃に入った医療保険を使おうと思ったのに役に立たない」という事態もありえます。

「終身払い」だと保険料の支払いが一生涯続く

終身医療保険は、保障は一生涯ですが、保険料の支払期間は自分で決めます。一生涯払い続ける「終身払い」を選ぶと1ヶ月あたりの保険料が最も安く済むのですが、この場合、もし年金生活になっても寝たきりになっても保険料の支払いが発生し続けます。「定年退職までに払い終わるように設定する」といった方法もありますが、そうすると今度は1ヶ月あたりの保険料が高くなり、もし早くに亡くなった場合は損に感じるかもしれません。

「定期」の医療保険のメリット

次は、定期終身保険のメリットについて見ていきましょう。

若いときの保険料が割安になりやすい

定期タイプは、若いうちは終身タイプより保険料が安く抑えられることが多いです。期間を区切ることで、同じ保険料でもより充実した保障を付けられるので、小さな子どもがいて家計の負担を最小限にしたい家庭などにも便利です。

変化に柔軟に対応しやすい

定期タイプは、更新のたびに保険について改めて考える時間を取ることになります。良くも悪くも「ずっと同じ」の終身タイプと違い、状況に合わせて柔軟に見直したり追加したり、最適な状態に保ちやすいでしょう。

「定期」の医療保険のデメリット

定期医療保険のデメリットは、たとえば以下のようなものです。

一定期間しか保障がない

定期医療保険は、一定の年齢に達すると契約が更新できなくなります。「保険は若いうちだけ入っておきたい」という人には向いているのですが、逆に「年齢を重ねてからの病気やケガのほうが心配」という人には合わないかもしれません。

高齢で更新できなくなってから別の医療保険に加入しようと思っても、持病や手術歴などが原因で加入を断られたり、加入できても保険料が高かったりする可能性があります。

更新で保険料が上がる可能性も

定期医療保険では、基本的に更新のたびに保険料が上がっていく点もデメリットです。「保険は若いうちに入った方が安い」とよく言われますが、定期タイプだと、せっかく保険料が安い若いうちに加入しても更新時に保険料が上がるため、終身タイプほどのメリットはありません。

最初は払えると思っていても、次の更新のタイミングで保険料がグッと上がり、それがたまたま子どもの進学と重なるなどすれば、一気に家計が苦しくなってしまう可能性もあります。

更新後も保険料を同程度にすることは可能ですが、たとえば入院したときに受け取れるお金を1日5,000円から3,000円にするなど、保障を小さくしないといけない可能性が高いです。

定期タイプを選ぶなら、いつどれくらい保険料が上がる予定なのか、よく確認しておきたいところです。

終身と定期、それぞれどんな人におすすめ?

終身医療保険と定期医療保険、それぞれの特徴をおさらいしておきましょう。

  終身 定期
 
保険期間 一生涯 一定期間
更新 なし あり
保険料 若い世代:定期より高くなりやすい

高齢世代:定期より安くなりやすい

若い世代:終身より安くなりやすい

高齢世代:終身より高くなりやすい

保険料の

変化

一生変わらない 更新のたびに上がる

終身タイプの医療保険に向いている人=長期的な保障を必要としている人

終身タイプに向いているのは、たとえば以下のような人です。

  • 保険内容も保険料も「一生ずっと同じ」であることに安心感を覚える人
  • 高齢で、今後医療費が大きく増えることを心配している人
  • 若い人で、保険料が安いうちに加入してずっと維持していこうと考える人
  • 保険料が掛け捨てになるのがイヤで、使わなかった保険料が戻ってくるタイプの保険に入りたい人
  • 一生分の保険料を「定年退職までに」など任意の期間で払いきってしまいたい人

定期タイプの医療保険に向いている人=短期的な保障を必要としている人

  • 「子どもが大きくなるまで」「臨時出費に耐えられるくらいの貯金ができるまで」など一定期間だけ加入しようと思っている人
  • 保険料をできる限り安く抑えたい、若い人
  • 保険を都度見直して、その時々にいちばん合った状態にしておきたい人
  • 高齢になってからの医療費は社会保障や貯蓄でなんとかすると考える人
  • すでに終身医療保険に加入済みで、保障を上乗せしたい人

終身と定期どっちがいい?迷ったときの医療保険の選び方

終身医療保険と定期医療保険、それぞれ一長一短があり、どちらに魅力を感じるのかは人によって違います。どちらかが特に優れているというわけではなく、単に「自分に合っているか」の問題です。

そのため、「○○がそうしていたから自分も」のように他人に合わせて選ぶのではなく、ある程度知識を付けて自分の価値観で「私はこう思うからこっちにする」と言える状態にしておくのがおすすめです。そうすることで「こんなはずでは」と後悔する事態も防ぎやすくなりますよ。

そもそも医療保険が必要なのかよく考えよう

ここまで、医療保険は定期タイプと終身タイプのどちらがいいのか、という視点で見てきました。ですが、そもそも医療保険は必要なのでしょうか。

保険営業の人に「定期と終身、どちらがいいと思いますか?」と尋ねられることがあるかもしれません。ただこれは、2択の質問を投げかけることで本来あるはずの「どちらも不要」という選択肢を思考回路から消す、よく使われる営業テクニックの1つでもあります。

「定期か終身か」を考える前に、そもそも医療保険が本当に必要なのかよく考えておきましょう。自分にとって必要な保険の見極め方は、以下の記事でも解説しています。

医療保険を検討するなら、定期か終身かだけでなく、どんな保障をいくら付ければいいのかなど、ほかにも決めなくてはならないことがいくつもあります。自分が医療保険を必要だと思う理由が明確になっているほど、おのずと選択肢が絞られ、決めやすくなります。

医療保険に入っていないと、病気やケガのときに困るかもしれません。でも、入りすぎても保険料が高くて家計を圧迫してしまうかもしれません。知識と思考を味方につけて「我が家のちょうどいいバランス」を見極めましょう。

医療保険以外で病気やケガのリスクに備える方法も

医療保険は個人の健康状態や考え方によってその必要性が異なります。また日本では諸外国に比べても充実した公的な医療保険制度があります。

病気やケガに伴う医療費の支払や、働けない期間や収入減少による生活費のリスクには医療保険以外でも「貯金や資産形成」や「働けない期間に保険金が受け取れる就業不能保険」で備えておくという考え方もあります。

 

をそれぞれご参照ください。

まとめ

 医療保険には、一生涯同じ保険内容と保険料を継続できる「終身タイプ」と、一定期間だけ加入できて柔軟に見直ししやすい「定期タイプ」の2種類があります。

それぞれメリット・デメリットがありますので、自分の価値観や家計の状況などを踏まえて長期的な視点で判断しましょう。「終身か定期のどちらか」という考えになりがちですが、もちろん「どちらも加入しない」「両方加入する」といった選択肢もありますよ。

オカネノホンネ編集部

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難しいお金の話を、ファイナンシャルプランナー技能士や保険・金融商品の専門家が忖度なし「ホンネ」でわかりやすく伝えます。

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