投薬や治療をしていると、生命保険に加入できないと聞いたことがある人は多いかもしれません。結論からいうと、糖尿病を罹患している場合には、生命保険に加入することが難しくなってしまいます。
本記事では、糖尿病患者が生命保険に加入することが難しい理由や、糖尿病でも加入しやすい生命保険などを詳しく解説します。
目次
糖尿病患者が生命保険に加入することが難しい理由
糖尿病患者は、一般的に生命保険に加入するのが難しいとされています。というのも、保険に加入する際は健康状態の告知が必要であり、健康状態が悪い場合は加入を断られる可能性が高いためです。
糖尿病は、一度発症すると完治が難しく、体調が悪化して入院をしたり、合併症(網膜症・腎症・神経障害など)を発症したりするリスクが高い病気とされています。そのため、引き受けに前向きではない保険会社が多い状況です。
ただし、発症年齢や治療内容、入院や合併症の有無などによっては、加入できる可能性もあります。告知内容は保険会社によって異なるため、糖尿病でも生命保険に加入したい場合は、複数の保険会社に問い合わせるようにしましょう。
糖尿病でも加入しやすい生命保険とは
糖尿病の場合は、通常の生命保険に加入できないケースが多くあります。健康状態に不安がある場合は、以下で紹介する「引受基準緩和型保険」や「無選択型保険」を検討してみましょう。
引受基準緩和型保険とは
引受基準緩和型保険は、告知項目が3~5項目程度に限定された保険です。保険会社によって告知項目が異なりますが、以下に該当しなければ、原則として契約できます。
- 過去2年以内に入院・手術をしたことがある
- 過去5年以内にがんで入院・手術をしたことがある
- 今後3ヶ月以内に入院・手術の予定がある
- 現時点でがん・肝硬変と医師に診断または疑いがあると指摘されている
- 現在までに公的介護保険の要介護認定を受けたことがある
なお、持病や既往症が悪化した場合も保障の対象になります。さらに、糖尿病が悪化して合併症を発症した場合も保障されるため、契約後の健康面の不安を軽減できるでしょう。
ただし、契約から1年以内は、受け取れる給付金や保険金が半分程度に削減される商品もあります。また、保険料は一般的な生命保険よりも割増になっているケースが多いです。そのため、一般的な生命保険を契約できるかを確認したうえで、断られた場合に引受基準緩和型保険への加入を検討しましょう。
無選択型保険とは
無選択型保険とは、診査や告知不要で加入できる保険です。糖尿病に罹患していることが審査において不利になることはないため、健康状態に不安がある場合は加入を検討しましょう。
ただし、保険料は引き受け基準緩和型保険よりも割高になっているケースが多いです。さらに、保障削減期間が設けられている商品や、加入前に発症していた病気に対しては保障されない商品も多くなっています。
そのため、加入するメリットがあるのかを十分に確認したうえで検討するようにしましょう。
そもそも糖尿病とは?
ここからは、症状や合併症の種類など、糖尿病にはどのようなリスクがあるのか、基本的な内容について解説します。
糖尿病の概要について
糖尿病とは、膵臓から分泌される「インスリン」と呼ばれるホルモンが不足し、血液中を流れるブドウ糖が増加する病気 です。高血圧や脂質異常症などと並んで「生活習慣病」として区分されることが多くなっています。
糖尿病には、自己免疫反応によってインスリンがほとんど分泌されなくなることで血糖値が上昇する「1型糖尿病」や、遺伝的な要因に加えて、運動不足や肥満などの生活習慣の影響を受けて発症する「2型糖尿病」、妊娠をきっかけに発症する「妊娠糖尿病」などの種類があります。
糖尿病の症状について
糖尿病の代表的な症状は、以下の通りです。
- 頻繁に喉が渇く
- 排尿の回数が増える
- 体重が減少する
- 疲れやすくなる
- 意識障害が起きる
また、自覚症状がないまま、網膜症・腎症・神経障害など、重度の合併症を発症することもあります。さらに、糖尿病が進行すれば、心臓病や脳卒中といった生死にかかわる病気のリスクが高まるため、生活習慣病のなかでも怖い病気の1つといえるでしょう。
なお、糖尿病に罹患した場合、食事療法や運動療法、服薬・注射などによって血糖値をコントロールする治療が行われます。
生命保険に加入する際に糖尿病を告知しないとどうなる?
生命保険に加入する際に、糖尿病を告知しなかった場合は「告知義務違反」になってしまいます。告知義務違反とは、故意または重大な過失によって事実を告知しなかったり、事実と異なることを告知したりすることです。告知義務違反が発覚すると、契約が解除(強制解約)されるうえに、保険金や給付金は支払われません。
故意に糖尿病であることを隠して加入しようとした場合、重大な告知義務違反とみなされ、契約が取消になる可能性もあります。なお、取消になった場合は、契約解除と異なり、解約返戻金も支払われません。
そのため、生命保険に加入する際は、現在の健康状態についてありのまま告知しましょう。健康診断や人間ドックの結果や血液検査の結果、薬剤名、治療期間などを正確に記入することが大切です。曖昧な場合は適当に記入せず、医療機関に確認をとりましょう。
糖尿病患者が生命保険を選ぶ際に注意したいポイント
糖尿病に罹患している人が生命保険を選ぶ際は、なるべく告知項目の少ない商品を検討しましょう。また、年齢別のリスクに応じた保障内容を選ぶことも大切です。
それぞれについて、以下で詳しく解説します。
告知内容がシンプルな保険を選ぶ
生命保険の告知項目は、保険会社によって異なります。たとえば、同じ引受基準緩和型の保険でも告知項目の数や内容には違いがあるため、自身の健康状態に合った告知内容の商品を選びましょう。
一概にはいえませんが、告知項目がなるべく少ない商品のほうが加入できる可能性は高くなるはずです。なお、2つの告知項目に該当がなければ、加入できる引受基準緩和型保険を取り扱う保険会社もあります。
年齢を考慮したうえで保険を選ぶ
厚生労働省の「令和2年患者調査」によると、糖尿病による平均入院日数は、年齢を重ねるほど長くなる傾向にあります。
年齢 | 平均入院日数 |
0~14歳 | 16.7日 |
15~34歳 | 11.5日 |
35~64歳 | 15.6日 |
65歳以上 | 40.7日 |
入院日数が長くなれば、その分出費は多くなります。しかし、入院日数が少ないからといって、費用がかからないわけでもありません。
生命保険文化センターの調べによると、直近入院時の自己負担費用の平均は19.8万円です。
このように、急な出費に対応するためにも、若い世代の人はある程度まとまった給付金が受け取れる、一時金タイプの保険に加入しておくことをおすすめします。
一方で、高齢者の場合は、生活習慣病で長期入院した場合に手厚く備えられる保険などに加入しておくとよいでしょう。
糖尿病でも加入しやすい生命保険3選
ここでは、糖尿病を罹患している人でも加入しやすい生命保険を3つ紹介します。告知などの加入条件や特徴を詳しく紹介するため、自身に適した保険を見つける際の参考にしてください。
あんしん少短|糖尿病有病者向定期保険「エクセルエイド」
糖尿病有病者向定期保険「エクセルエイド」は、最長89歳まで更新可能な死亡保険です。糖尿病の治療中でも、3つの告知項目に該当がなければ加入できます。
基本的には1年更新で、6歳~89歳まで加入可能です。最低30万円~最高300万円まで7つのプランから選択できます。なお、糖尿病が原因の死亡であっても保障対象です。
死亡保障100万円プランの場合、35歳男性の保険料は928円、女性の保険料は812円です。
ただし、初年度の保険契約については、契約日からその日を含めて60日は保障されない期間(免責期間)がある点に注意しましょう。
SOMPOひまわり生命|新・誰でも終身
「新・誰でも終身」は、無選択型の終身保険です。診査や告知不要で加入できるため、糖尿病の人でも一生涯の死亡保障を用意できます。
40~75歳まで加入でき、40~60歳は最大500万円、61~75歳は最大300万円の保険金額まで申し込めます。
ただし、契約日から2年以内に病気で死亡した場合は、既払込保険料相当額しか払われません。なお、契約日から2年経過後に死亡した場合や、契約日から2年以内に災害で死亡した場合は、契約時に決定した保険金額が支払われます。
メットライフ生命|終身保険 ずっとスマイル
「終身保険 ずっとスマイル」は、3つの簡単な告知で申し込める一生涯の死亡保険です。
30歳~80歳まで申し込み可能となっており、解約時には契約経過年数に応じた解約返戻金が発生します。災害死亡時に病気死亡時の4倍の保険金を受け取れる「災害死亡給付特約」を付加することも可能です。
ただし、契約日からその日を含めて1年以内に病気が原因で死亡した場合は、保険金額の50%相当額しか支払われません。なお、1年経過後または災害死亡の場合は、全額支払われます。
まとめ
糖尿病は生活習慣病の一種であり、病状が進行すると合併症を引き起こし、入院・死亡するリスクが高い病気です。そのため、糖尿病の治療を目的に通院したことがある人は、生命保険への加入が難しいでしょう。
糖尿病でも生命保険に加入したい場合は、引受基準緩和型保険のような告知項目が少ない保険を検討してみましょう。保険会社によって告知の内容や項目数は異なるため、複数の保険会社を比較しながら検討することをおすすめします。
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP