先進医療/せんしんいりょう
『先進医療』とは、厚生労働大臣が定める高度な医療技術のことです。先進医療にかかる医療費は、全額自己負担になります。ただし、保険診療との併用は可能です。
先進医療と自由診療の違い
先進医療と同じく、医療費が全額自己負担なのが「自由診療」です。自由診療は、美容医療などで耳にする機会も多いですが、例えば、がんや難病の治療で、”海外で承認されていて、国内では承認されていない医療技術や薬”を使うといった場合も自由診療に含まれます。病気の治療で自由診療を選択すると問題となるのが、診察や入院などの本来保険診療の対象となる部分も自己負担になり、より負担が大きくなることでした。
そこで厚生労働省が、”国民の安全性を確保しながら、負担の拡大も防止する”として、保険診療と自由診療の併用を認めたのが先進医療です。ただし、先進医療には、今後、その医療技術を保険診療として認めるか、という「評価療養」の役割もあるため、自由診療のうち、厚生労働省が認定した医療技術だけが対象となります。2022年10月1日時点で先進医療に認定されているのは、84種類です。
また実際に、先進医療から保険診療に認められた技術もあります。白内障の治療に用いられる「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」は、2018年7月1日~2019年6月30日の先進医療実施件数の9割を占めていた技術です。2020年4月1日からは、手術技術料が保険適用となり、現在は先進医療ではなくなりました。
反対に、先進医療の対象からはずれて自由診療になる医療技術や新たに先進医療に認定される医療技術もあるなど、先進医療は常に入れ替わっています。
先進医療の受診方法
先進医療は、専門医によって必要性が認められた人しか受診できません。また、実施している医療機関も限定的です。ですから、症状に合った先進医療が合った場合、まず、主治医、または実施している医療機関への相談します。その上で、必要性を判断してもらうには、専門医の受診が必要です。
専門医によって必要性が認められた人は、治療内容と費用の説明を受けます。内容に同意し、同意書に署名すれば、治療可能です。
先進医療の治療費
厚生労働省の調査によれば、先進医療全体の1人当たりの費用は、約110万円です。しかし、受診する先進医療によって、治療費には幅があります。
具体的な医療費の例は以下の通りです。
技術名 | 適応症例 | 平均的な費用 |
陽子線治療 | がん | 約271万5,000円 |
重粒子線治療 | がん | 約312万4,000円 |
高周波切除器を用いた子宮腺筋 | 子宮腺筋症 | 約30万3,000円 |
MRI撮影及び超音波検査融合画像に基づく前立腺針生検法 | 前立腺がん | 約10万8,000円 |
家族性アルツハイマー病の遺伝子診断 | アルツハイマー | 3万円 |
引用:令和2年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について(厚生労働省)
上記からわかるように、がんに適用される陽子線治療と重粒子線治療は、その他の先進医療と比べて高額です。しかしながら、この2つは、先進医療の中では受診する人が多い治療でもあります。一般に先進医療が非常に高額というイメージがあるのは、このためなのではないでしょうか。
先進医療特約
各生命保険会社は、先進医療を受けた場合に給付される「先進医療特約」を販売しています。先進医療特約の特徴は、自己負担額の実費が給付されることです。一般に給付額は、通算で2,000万円など、上限が設けられています。給付金の対象となるのは、先進医療にかかる技術料のみで、診察・検査・投薬・入院費など、保険診療と共通する費用は対象となりません。生命保険会社によっては、医療機関に直接費用を支払ってくれるケースや先進医療を受けたときにかかる宿泊費や交通費に充当できる一時金が支払われる商品(先進医療一時金特約)もあります。
<参照サイト>
先進医療の概要について(厚生労働省)