介護のリスクに備える。公的な介護保険制度と介護に必要なお金と対策を解説

ライフプランニング

健康で介護もなく暮らせるのが一番ですが、加齢にともない自分の親や自分・家族も含めた介護のリスクには備えたいものです。平均寿命が長くなるに伴い、介護に必要なお金や期間も増えています。この記事では介護に必要なお金や公的な保障について解説します。

公的な介護保険とは

公的な社会保険制度である介護保険制度のもとでは、原則65歳以上の要介護認定を受けた人が、利用料の1部を支払うことで介護サービスを受けられます

介護保険料は40歳以上から徴収され、3年ごとに見直されます。65歳以上は第一号被保険者といい、年金から天引きされます(年金額が18万円未満は自分で納入)。40歳から64歳までは第二号被保険者といい、医療保険とあわせて徴収されます。会社員の場合は、報酬に介護保険料率をかけた金額を会社と折半して支払います。自営業者は所得と世帯の保険者数によって介護保険料が算出されます。なお介護保険の財源としてはこれらの保険料が約50%、残りの50%は税金が充当されます。つまり、自己負担で支払っているのは財源のうちの一部ということになります。

また原則65歳以上が支給対象ですが、40〜65歳未満の方(第2号被保険者)で「老化が原因とされる16種類の特定疾病」にて介護認定を受けた場合は公的介護保険のサービスが利用できます。

要介護度と支給限度月額

要介護度によって利用できるサービスや月ごとの限度額が決まります。要介護度は要支援1~2から要介護1~5の全7段階です。それぞれの段階の状態と支給限度月額の目安は以下となります。

区分 身体の状態 支給限度月額 自己負担限度額

(一割負担の場合)

要支援1 自宅での日常生活動作(食事・排泄・入浴・掃除)のにおいて、基本的には一人で行うことが可能だが、手段的日常生活動作(買い物・金銭管理・内服薬管理・電話利用)のどれか1つもしくは一部は見守りや介助が必要 50,320円 5,032円
要支援2 要支援1に加え、下肢筋力低下により、歩行状態が不安定な人。今後日常生活において介護が必要になる可能性のある人。

機能の維持や改善のために何らかの支援が必要な人。

105,310円 10,531円
要介護1 手段的日常生活動作でどれか1つ、毎日介助が必要となる人。日常生活動作においても、歩行不安定や下肢筋力低下により一部介助が必要な人 167,650円 16,765円
要介護2 手段的日常生活動作や日常生活動作の一部に、毎日介助が必要になる人。

日常生活動作を行うことはできるが、認知症の症状がみられており、日常生活にトラブルのある可能性がある人も対象

197,050円 19,705円
要介護3 自立歩行が困難な人で、杖・歩行器や車いすを利用している人。

毎日何かの部分でも全面的に介助が必要な人

270,480円 27,048円
要介護4 常時介護なしでは、日常生活を送ることができない人 309,380円 30,938円
要介護5 ほぼ寝たきりの状態で、意思の伝達が困難で、自力で食事が行えない状態の人 362,170円 36,217円

 ※2022年4月時点の支給限度月額。自己負担は所得によって2~3割に変動

 ※正確には金額ではなく「単位」を基準によって算出され、サービスの種類や地域よって1単位の金額が異なるが、目安として1単位10円として計算

介護保険の自己負担額

介護保険サービスの利用の際には1~3割の自己負担がかかります。なお支給限度月額を超えた場合は全額自己負担となります。本人の負担割合は本人の所得と、本人が所属する世帯の所得金額(年金含む)によって決定します。

本人の合計所得金額 世帯での合計所得金額 自己負担割合
220万円以上 単身世帯:340万円以上 3割負担
二人以上世帯:463万円以上
単身世帯:280万円以上340万円未満 2割負担
二人以上世帯:346万円以上463万円未満
単身世帯:280万円未満 1割負担
二人以上世帯:364万円未満
160万円以上220万円未満 単身世帯:280万円以上 2割負担
二人以上世帯:346万円以上
単身世帯:280万円未満 1割負担
二人以上世帯:346万円未満
160万円未満 1割負担

介護保険で受けられる主なサービスには「自宅で利用するサービス」と「施設を利用するサービス」があります。自宅ではなく施設を利用、かつ長期間になるほど自己負担の金額は増えていきます。概要を見てみましょう。

「自宅で利用する介護サービス」としては

  • 訪問介護
  • 訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • 居宅療養管理指導
  • 福祉用具貸与・販売
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護

などがあります。

「施設を特定の期間利用する介護サービス」としては

  • 通所介護(デイサービス)
  • 通所リハビリテーション(デイケア)
  • 短期入所生活介護、療養介護(ショートステイ)
  • 小規模多機能型居宅介護

などがあります。

「施設に長期間入所する」場合、入所先としては以下などがあります。

  • 特別養護老人ホーム(特養。要介護者が、身体介護や生活支援を受けるための施設。要介護3以上の人)
  • グループホーム(認知症の高齢者が共同生活を通じて、自立した生活を営めるようにするための施設。認知症の診断を受けている要支援2以上の人)
  • 介護老人保健施設(老健。要介護高齢者がリハビリを行い、在宅復帰を目指す施設。要介護1以上の人が対象)

長期間入所する場合、いずれも月額の利用料は10~20万円程度の施設が多いです。また民間事業者による老人ホームやサービス付き高齢者住宅(サ高住)などもありますが、民間サービスのほうは利用料が高い傾向にあります。

なお介護サービスを受けるにあたっては、市区町村の窓口に申請した後、訪問審査による1次判定、介護認定審査会による二次判定をへて介護度が認定されます。

要支援1、要支援2は介護予防サービスが受けられ、要介護1以上は介護サービスを受けることになります。

高額介護サービス費

介護サービスの支払にあたって、同一世帯の自己負担が一定額(自己負担上限額)を超えると、超えた金額が市区町村から払い戻されます。

対象者 自己負担限度額
世帯の誰かが現役並み所得者に相当 44,400円(世帯)
世帯の誰かが住民税を課税されている 44,400円(世帯)
世帯の全員が住民税を非課税 24,600円(世帯)
  うち、前年の合計所得と公的年金収入の合計額が年間80万円以下 24,600円(世帯)
15,000円(個人)
生活保護受給者 15,000円(個人)

出典:厚生労働省「月々の負担の上限(高額介護サービス費の基準)が変わります」

介護する家族への支援制度

その他、家族に介護が必要になった際に、介護と仕事の両立や介護費用の一助となる制度を紹介します。

介護休業制度

2週間以上にわたって歩行、排泄、食事などの日常生活に必要な行為に対する介護を必要とする家族を介護するために休暇を取得できます。対象となる家族1人につき3回、通算93日まで休業が可能。

介護給付金制度

介護休業中に条件を満たす場合は休業前賃金の67%が支給されます。主な条件は「雇用保険の被保険者」「家族の常時介護のため二週間以上の休業が必要」「職場復帰を前提」などです。

所定外労働の制限

介護する労働者の残業が免除されます。1回の請求で1ヵ月以上1年以内だが、請求できる回数に制限はありません。

労働時間の短縮

所定労働時間の短縮、フレックスタイム、時差出勤などの措置を講じます。

家族介護慰労金

要介護4・5に指定されている家族を在宅で介護している場合(その他細かい条件あり)、自治体から年1回約10万円が支給されます。金額や実施状況は自治体で異なります。

介護で必要なお金について

それでは介護を受ける人の割合や必要な金額はどの程度なのか見てみましょう。

男女ともに平均寿命が81歳を超えてきていますが、厚生労働省および総務省によると、80~84歳までの人は25.9%、85歳以上の人は59.8%が要支援もしくは要介護状態とされています(参考:厚生労働省「介護給付費等実態統計月報(令和4年3月審査分)」/総務省「人口推計月報 令和4年8月報」)。

介護にかかる費用は「介護期間」「所得」「介護度」によって変わります。また介護サービスには上記のように介護保険が適用され1~3割の自己負担となりますが、それ以外に介護でかかる費用があります。

具体的には

  • 介護用品代(おむつ・口腔ケア等の消耗品など)
  • 福祉用具
  • 介護食代(食事の宅配)
  • 住宅改修費用

などがあります。それらの介護保険適用外の費用も含めた介護費はどの程度かかるのでしょうか。

令和3年度の生命保険文化センターの調査結果では

・介護期間:平均は61.1ヵ月(約5年1か月)、4年を超えて介護する人は約5割、10年以上の人は17%。年々増加傾向。
・月々の費用:
平均8万3,000円。10万円以上かかると答えた人は31.6%
・一時的な費用:平均74万円(介護用に自宅のリフォームやベッドなどの購入)

となっており、平均値から算出する介護費の合計は約581万円(=61.1ヵ月×83,000円+740,000円)となるとされています。

介護期間が平均の倍である10年以上の人は17%、その場合は介護費が1000万円以上かかっているケースも多いでしょう。

介護費用に備える

これまで紹介してきたように、日本における公的な介護保険制度は「介護認定ごとに決められたサービスが割安な利用料で利用できる」といった形をとります。介護保険制度によって自分や家族の介護に関わるお金のリスク・負担は一定レベルにおさえられています(十分とはいえないですが)。

それでも平均約580万円、人によってはそれ以上かかる介護費をどのように備えておけばよいのでしょうか。

介護費の備えは、貯蓄によって備えるのが基本です。そもそも介護費用のすべてを民間の介護保険でまかなうとしたらな月々かなりの保険料になってしまいます。保険料の支払で貯蓄が進まないのは本末転倒でしょう。

民間の介護保険を検討するのであれば「貯蓄の上乗せ分として、民間の介護保険を必要に応じて検討する」という程度が現時点ではいいでしょう。

貯蓄や資産形成で備える

貯蓄・資産形成によって介護のリスク、お金に備えます。毎月3万円・年36万円を投資にまわして年3%で運用し続けた場合、14年で600万円を超える計算になります。特に若い方は長期投資による貯蓄・資産形成で介護のリスクに備えましょう。

具体的な節約や投資に関して興味がある方は以下の記事を参照ください。

介護のリスクに民間の介護保険で備える

貯蓄で備えた上でさらに民間の介護保険で介護費用に備えるためには大きくは以下の3つの方法があります。

①医療保険などに「介護の特約」を付加する
②主契約として「介護保険」に加入する
③生命保険などの保険料の払込満了時点で介護保障に移行する方法

詳細を確認したい人は以下の記事を確認ください。

また若い人が「65歳より前の働けないリスクに備える」という観点では「就業不能保険」のほうを検討することをお勧めします。詳細は以下の記事を確認ください。

まとめ

介護にならないように健康であることが一番ではあります。それでももし自分や家族に介護が必要になった際にどうしたらいいのでしょうか。介護には平均で約580万円もの費用がかかっています。介護期間が10年以上になる人も17%と言われています。公的保障制度も充実しているので一定の支援はありますが、それでも足りないと考える場合は民間の保険加入や早いうちからの貯蓄・資産形成によって備えるのも一つの方法です。

オカネノホンネ編集部

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難しいお金の話を、ファイナンシャルプランナー技能士や保険・金融商品の専門家が忖度なし「ホンネ」でわかりやすく伝えます。

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