老後にお金がないとどうなる?知っておきたい6つのリスクと対処法

ライフプランニング

40~50代の人は、定年退職が近づくにつれて、老後の生活費や資金計画に不安を感じているのではないでしょうか。年金や貯蓄だけで生活を維持できるのか、予期せぬ医療費や介護費用に対応できるのか、心配している人は多いでしょう。

そこで本記事では、老後にお金がない場合に直面する6つのリスクとその対処法を詳しく解説します。今回の内容を参考にしながら、安心して老後を迎えるための準備を始めておきましょう。

老後にお金がない場合に想定されるリスク

老後に十分な資金がないと、生活の質が大きく低下する可能性があります。具体的にどのようなリスクが考えられるのか、以下で詳しくみていきましょう。

生活が成り立たなくなる

老後に十分な資金がないと、日常生活に必要な費用を賄えなくなる可能性があります。

生命保険文化センターの「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」によると、夫婦2人が老後生活を過ごすうえで必要と考える最低限の日常生活費の平均は月額23.2万円とされています。

引用:生命保険文化センター|2022(令和4)年度 生活保障に関する調査

たとえば、夫婦2人とも60歳で定年退職し、65歳から老齢厚生年金を受給するケースを考えてみましょう。夫婦2人とも85歳まで生きると仮定した場合、60歳から85歳までにかかる生活費は23.2万円×12ヶ月×25年=6,960万円です。

一方で、年金は65歳から85歳までの20年間受給できるため、受給額の合計は約21.9万円(※)×12ヶ月×20年=5,256万円となります。
※令和4年の厚生年金支給額(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)を基に算出

つまり、収入源が年金のみの場合は、6,960万円-5,256万円=1,704万円生活費が不足する可能性があります。老後を迎えるまでに貯蓄しておかなければ、食費や光熱費、交通費など基本的な生活費を確保できない状況に陥るでしょう。

適切な医療が受けられなくなる

年齢を重ねると、病気やケガのリスクは高まっていくため、医療費の負担が増える可能性があります。厚生労働省の調査によると、日本人が一生涯にかかる医療費の平均は、一人あたり2,800万円です。そのうち約5割以上が70歳以降で必要になるとされています。

引用:厚生労働省| 生涯医療費(令和3年度)

医療費が高額になった場合は「高額療養費制度」を利用することが可能です。高額療養費制度とはひと月あたりの医療費が高額になった場合に、所定の上限額を超えた金額の払い戻しを受けられる制度を指します。

しかし、高額療養費制度では、1日~末日の1ヶ月ごとに上限を超えたかどうかを判断するため、月またぎで治療が行われる場合は、自己負担額が大きくなる可能性があります。仮に、長期入院が必要になった場合は、多額の医療費を支払うことになるでしょう。

また、個室などを利用する際にかかる差額ベッド代や、入院中の食事代や雑費、先進医療の技術料などは公的医療保険制度の対象外です。

そのため、貯蓄や医療保険などで医療費の支出に備えておかなければ、必要な治療を受けることが難しくなる可能性があります。

介護費用が支払えなくなる

高齢になると、介護が必要になる場合がありますが、お金がなければ十分な介護サービスを受けられない可能性があります。

公的介護保険制度があるため、介護サービスを利用した時の自己負担額は原則1割です。しかし、有料老人ホームに入居する際の居住費や、要介護状態に応じて定められた公的介護保険の支給限度額を超えた分の費用などは、基本的に全額自己負担になるため、経済的な負担が大きくなる可能性があります。

生命保険文化センターの調査によると、住宅改造や介護用ベッドの購入費など一時的な費用の合計は平均74万円、毎月かかる介護費用の平均は8.3万円とされています。また、介護期間の平均は5年1ヶ月ともいわれているため、74万円+8.3万円×61ヶ月=約580万円の費用がかかります。

引用:生命保険文化センター|介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?

このように、介護サービスを受けるには、まとまったお金が必要です。お金がなければ家族に頼らざるを得なくなり、負担をかけてしまいます。

住居の修繕やリフォームができなくなる

老朽化した住居の修繕やリフォームには、多額の費用がかかります。老後に十分な資金がないと、必要な修繕や改修ができず、安全で快適な住環境を維持することが難しくなるでしょう。

住宅金融支援機構の「高齢者の住まいに関する調査」によると、ローンなどを利用しない場合、リフォームをするには貯蓄残高500万円以上が必要とされています。

引用:住宅金融支援機構|高齢者の住まいに関する調査

住宅のバリアフリー化を進められないと、高齢者にとってケガにつながるリスクが高くなります。もしケガをしてしまった場合、医療費がかさむため、早めに修繕やリフォームに取り組むべきでしょう。

趣味や身内との付き合いにお金をかけられなくなる

老後の楽しみや家族・友人との交流にもお金が必要です。資金が不足していると、趣味やレジャーを楽しむ機会が減り、孤独感やストレスが増すことがあります。

生命保険文化センターの調査によると、夫婦2人でゆとりある老後を迎えるには、毎月平均37.9万円が必要になると考えられています。そのため、十分な貯蓄がなければ、ゆとりのある生活は過ごせなくなる可能性が高いでしょう。

引用:生命保険文化センター|老後の生活費はいくらくらい必要と考える?

葬儀費用を捻出できなくなる

葬儀費用は、一般的に100万円以上のお金が必要となります。老後の貯蓄にゆとりがない場合、自身の葬儀費用や死後の整理費用を準備できず、家族に大きな負担をかけてしまうでしょう。

また、地域によっては葬儀費用が異なるため、まとまったお金を貯蓄しておくべきだといえます。

老後の生活を豊かにするための対処法

老後の生活を豊かにするには、計画的に資金を準備することが必要です。以下では、具体的な対処法を紹介します。

NISAを活用する

NISAとは、株式や投資信託などの金融商品への投資で得た利益が非課税になる制度です。通常の課税口座で取引するよりも手元に残るお金を増やせるため、効率よく老後資金を準備できるメリットがあります。

NISAには「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の2つの非課税枠があります。成長投資枠は年間240万円まで、つみたて投資枠は年間120万円まで非課税で投資可能です。一生涯通算での上限額は、2つの非課税枠合計で1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)となっています。

非課税保有期間は無期限であるため、早めにNISA口座での投資を始めれば、その分複利効果(運用で得た利益を再投資に回すことで、利益が利益を生み出す効果)が大きくなり、多くの運用益を得られる可能性があります。

以下の記事では、NISAについて詳しく解説しています。気になる人はぜひご一読ください。

iDeCoを活用する

iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、自分で掛金を拠出して運用する、私的年金制度です。iDeCoで拠出した掛金は、原則として60歳までは引き出せないため、老後資金を準備しやすい仕組みになっています。

iDeCoの掛金は、全額所得控除の対象になるため、所得税や住民税の軽減につながります。また、運用益は非課税で再投資され、年金で受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金で受け取る場合は「退職所得控除」の対象になるため、税金面でのメリットが大きい制度といえるでしょう。

貯蓄型保険に加入する

老後資金に備えるには「貯蓄型保険」に加入するのも一つの方法です。貯蓄型保険とは、万が一に備えながら貯蓄もできる保険のことを指します。保険料の一部が積み立てられるため、解約時には解約返戻金、満期を迎えると満期保険金などを受け取ることが可能です。

老後の資産形成に役立つ貯蓄型保険の代表例としては、個人年金保険や終身保険が挙げられます。個人年金保険は、一定期間保険料を払い込み、60歳や65歳などから年金を受け取る保険です。

一方で、個人年金保険は貯蓄性が高く、最終的に支払った保険料以上の年金を受け取れる商品もあります。また、保険料を毎月自動的に口座から引き落としされるため、貯蓄が苦手な人でも老後資金を貯めやすいでしょう。

終身保険は、保障が一生涯続く死亡保険です。万が一のことが起きた場合の葬儀代などに備えつつ、必要に応じて解約し、解約返戻金を老後の生活費に充てることが可能です。

なお、生命保険の保険料は「生命保険料控除」の対象です。保険契約者が1年間に払い込んだ保険料に応じて、その年の所得から一定額を差し引けるため、所得税や住民税の負担軽減につながります。

まとめ

老後にお金が不足すると、日常生活が厳しくなり、医療費や介護費用も支払えなくなる可能性があります。また、リフォーム費用を捻出できなくなったり、趣味や娯楽にお金をかけられなくなったりなど、生活の質が大きく低下するリスクもあります。

年金だけでは最低限の生活費を賄うことすらままならないケースもあるため、なるべく早めに老後資金の準備を始めておきましょう。効率よくお金を貯めたい人はNISAやiDeCoなどの税制優遇制度を活用しましょう。

葬儀代や配偶者の生活費など、万が一に備えつつ老後に向けた資産形成に取り組みたい人は、貯蓄型保険への加入を検討するのも一つの方法です。

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オカネノホンネ編集部

オカネノホンネ編集部

難しいお金の話を、ファイナンシャルプランナー・ファイナンシャルプランニング技能士や保険や金融商品の専門家が忖度なし「ホンネ」でわかりやすく伝えます。

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